ジャニーズ事務所に利益を提供しつづけて良いのか?
3月にBBCがジャニー氏の性加害問題を報道してから今日に至るまで、ジャニーズ事務所所属タレントの起用方針を大きくは変更していない大手メディア同様に、多くの広告主も所属タレントを起用した広告を展開し続けています。
もちろん、あくまで今回の性加害問題の元凶はジャニー氏であり、その問題の責任を負うべきは問題を隠蔽したり放置していた事務所側にあり、所属タレントは問題とは無関係であったり被害者とも言える存在ですから、今回の調査報告書の公開をもって広告起用を停止する判断を行うべきかどうかは議論があるポイントといえます。
そういう意味で、おそらく多くの広告主は、9月7日に実施されると発表されているジャニーズ事務所側の会見を待ち、その内容をもって判断を行う方針であると考えられます。
ただ、広告主は、薬物使用や不倫などの不祥事を起こしたタレントのCM放送は、疑惑の段階であっても即座に停止するのが一般的です。
それに対して、ここまで大規模な性加害問題を隠蔽していたことが明確になったジャニーズ事務所に対して、多額の契約金を支払う広告契約を継続し続けているということに違和感を覚える方は少なくないはずです。
実際に「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の平本淳也代表は、東洋経済の取材に対して、マクドナルドや日産自動車などの社名を挙げて、「今の事務所に利益を提供し続けることは、被害者を冒涜していませんか?」とスポンサー企業への問題提起をされているのです。
(参考記事:「ジャニーズ性加害問題当事者の会」が直言!「マクドナルドや日産などのスポンサー企業も当事者意識を」)
対策が発表されるまでの期間も広告を継続するのか
ジャニーズ事務所が、今回の問題に対する対策などを発表するとされる会見を開く予定の9月7日まで、まだ1週間あります。
現時点では事務所側が、どのような対応をするかが一切見えてこないことを考えると、会見前にジャニーズ所属タレントのCMを一旦中断するという判断を行う広告主が出てきてもおかしくない状況といえるでしょう。
特に、東京五輪開催直前に、大会開催や運営に関わる混乱を踏まえてトヨタ自動車が国内のテレビCM放映を見送ると発表したことが、他のスポンサー企業の行動にも影響をあたえたように、今回の問題に対しても、どこかのスポンサー企業が動けば多くの企業が追随する可能性もあります。
(参考記事:トヨタ、五輪関連国内TVCM見送り 最高位スポンサー)
広告業界の関係者に聞いた話によると、4月に入ってからジャニーズ事務所との新規の契約を保留しているケースも出てきているようですから、少なくとも今回の発表を受けて様子見になる広告主は更に増える可能性があります。
一方で、広告主からすると、ファンの多いジャニーズの所属タレントとの既存の契約を性急に停止したり、広告出稿を取りやめたりすれば、逆にファンからの批判を受けてしまうリスクもあります。非常に難しい判断を迫られているのは間違いないと言えるでしょう。
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