人的資本開示を「無駄」にしない ディスコ・マネフォの資料から「実情」を読み解く(2/3 ページ)
人的資本の情報開示は、ただルールに沿って行うだけでは意味を成さず、“無駄”になってしまう。人的資本開示を「無駄」にしないためにすべきこととは? 事例を基に解説。
決められたデータだけで分かることは少ない
人的資本情報の開示内容について、国は人材の多様性の確保や、社内環境整備という方向性は示している。だが、どんな目標を定めて何をするかは各企業に任されている部分が多い。
そんな中でも、男女の賃金格差と男性育休取得率、女性管理職比率については、どの企業も同じ計算方法によるデータを記載するよう決められている。既に女性活躍推進法でデータの出し方が決められているということもあるが、「男女格差の問題に、上場企業はより真剣に取り組むべし」という国からのメッセージを感じられる。
ただし、ルール通りに記載したデータだけで企業の状態を把握するのは難しい。
例えば男女賃金格差は「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の3区分で数値を公表することとなっている。しかし、この3つの数値だけでは大したことは分からない。
例えば、正社員の女性の平均賃金が、男性のそれの50%であるA社と、70%であるB社を比べると、A社の方が格差が大きく、努力が足りないように感じられる。
しかし、A社は今は女性管理職が少ないが、新卒の女性を積極的に採用し、将来の幹部候補として育てていこうとしているのだとしたらどうか。新入社員の初任給に引っ張られて女性の平均賃金が下がるのは、一時的には仕方がないだろう。
一方で、B社は他社から引き抜いてきた数人の女性管理職が女性の平均賃金を引き上げているものの、新入社員は男性の割合の方が高いという状況だとしたらどうか。10年後にはA社とB社の男女賃金格差や女性管理職割合が逆転している可能性もある。
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