人的資本開示を「無駄」にしない ディスコ・マネフォの資料から「実情」を読み解く(1/3 ページ)
人的資本の情報開示は、ただルールに沿って行うだけでは意味を成さず、“無駄”になってしまう。人的資本開示を「無駄」にしないためにすべきこととは? 事例を基に解説。
前回の記事で、女性の平均賃金は男性より3割低いという日本の現状に触れた。このような数字が明らかになったのは、2022年の女性活躍推進法に関する制度改正で、企業に男女賃金格差の情報を公表する義務が課されたことが大きい(対象は従業員数301人以上の企業)。
23年1月には、上場企業などが公開する有価証券報告書でも、男女の賃金格差を開示することとなった。男性育休取得率と女性管理職割合も「人的資本情報」として開示が義務付けられた。大企業を中心に、社内の男女格差を可視化して説明することが求められているのだ。
しかし、人的資本の情報開示は、ただルールに沿って行うだけでは意味を成さず、“無駄”になってしまう。
人的資本開示が求められる理由
いま「人的資本」が注目される背景には、変化の激しい現代において過去の成功パターンが通用しないという危機感がある。社長が先を見通し、上司が正しいやり方を知っていて、部下たちはそれに従っていれば良いという時代ではなくなった。新しい発想を持ち、それを実行する力のある社員を育てていかないと企業の存続が危ういし、現場で働くスタッフにも、マニュアルにないことを自分で判断する力が求められる。単なる労働力ではなく、価値を生み出す存在として、人の重要性が増しているのだ。
それなのに、日本は少子高齢化でますます人が足りなくなっていく。人材をどう確保し、どう生かしていくかで、各企業と日本の先行きが変わる。だから、国や投資家は企業に「人的資本経営」を迫るべく、情報開示を要求しているのだ。
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