カリスマ上司に罵倒され成長……パワハラとプレッシャーの境目はどこに?:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)
カリスマ経営者のパワハラ問題が週刊誌で報道された。優秀な指導者による厳しい指導やプレッシャーにより組織や個人が成長することは少なくない。では、パワハラとプレッシャーの境目はどこにあるのだろうか。
先日、講演会の後の質疑応答の時間で、ある経営者のパワハラ問題について質問されました。
ジャニーズ問題でまっさきに「チャイルド・アビューズ(子ども虐待)は絶対にあってはならない。ジャニーズ事務所を使うことは虐待を認めることになる」と発言した、サントリーホールディングスの新浪社長についてです。質問は、次のような内容でした。
「新浪さんのパワハラ問題が週刊誌で報じられていますが、だいたい仕事のできる人って、パワハラ気質ですよね。自分も若い時には、上司に罵倒を浴びさられたり、ケリをいれられたりしましたが、いずれもかなり優秀な上司で。相手がすごすぎると、余計に何もいえない、耐えるしかありませんでした。
今はさすがに暴力をふるうような人はいません。でも、今になって昔を振り返ると、ある程度、プレッシャーをかけないと、いつまでたっても自分の限界を越えられないように感じています。
そこで質問です。パワハラとプレッシャーの境目は、どこにあるのでしょうか? あと……そうした優秀な人が、客観的に見て明らかにパワハラをしていた場合、それを止めさせるにはどうしたらいいでしょうか?」
さて、いかがでしょうか。
念のため断っておきますが、週刊誌が報じた内容の真偽は私には分かりません。
というのも、私のフィールドワークのインタビューに協力してくれた900人超のビジネスパーソンの中には、新浪さんの下で働いた経験のある人が数人いて、私が聞いたのはいずれも「新浪さんのおかげで、今の自分がある」といった話ばかりでした。とはいえだからといって、週刊誌の報道を否定するつもりもなければ、新浪さんを擁護する気もさらさらありません。
ただ、こういった質問──すなわち「プレッシャーは必要なのではないか」「パワハラとプレッシャーの境目は?」「パワハラをどうしたら止めさせられるか?」と聞かれたのは、今回が初めてではありません。
というわけで、パワハラは絶対にダメだけど、プレッシャーはどうか? というテーマで、あれこれ考えてみたいと思います。
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