「なめられたくない」「マウントを取りたい」──なぜ、中高年の転職はこうも不器用なのか?:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)
「かっぱ寿司」元社長が「はま寿司」から営業秘密を不正に持ち出した件で、「転職先で部下になめられたくなかった」「マウントを取りたかった」という動機が報道された。中高年での転職を検討する人にとって、この動機は他人事ではない。なぜ、中高年の転職はこうも不器用なのか──?
「やっぱりこの年になっての転職って、なめられたくない気持ちはありますよね」──こう話すのは、大手化粧品メーカー社員で現在転職活動中の竹内さん(仮名)48歳です。
竹内さんの会社では、52歳になるとセカンドキャリア研修という名の“肩たたき研修”を受けさせられます。研修を受けた先輩たちから「実際に研修を受けるとモチベーション下がりまくる」「怒りすら湧いてきた」「あれは完全に自信を喪失させるための研修だ」という声を聞き、50歳をめどに転職することを決意。
そんな竹内さんが「今までやってきた自負心もあるし、自分にとっては大きな決断なわけですから。他人事じゃないんですよね」と吐露するのは、「かっぱ寿司」元社長の情報漏えい問題です。
かっぱ寿司元社長、動機は「なめられたくなかった」
先週、回転寿司大手「かっぱ寿司」の運営会社の元社長(47歳)が、ライバル会社の「はま寿司」から営業秘密を不正に持ち出した罪に問われている裁判が行われました。47歳の被告は「転職先で部下になめられたくなかった」「マウントを取りたかった」という犯行動機を述べたと報道されています。
「転職先で舐められたくなくて、不正しちゃったんです!」なんて幼稚な告白を私は聞いたこともありませんし、「マウントを取りたくて、つい……」なんておっちょこちょいに会ったこともありません。ましてや、竹内さんが新天地で倫理にもとる行為をするとは、到底思えません。
一方で、確かに彼の言う通り40歳を過ぎてからの転職で、新天地に苦労する人は少なくありません。それは40歳をすぎて転職をした人たちがぶつかる「壁」でもあります。
そこで今回は、中高年の転職についてあれこれ考えます。
なぜ「多くの人はうまくいかない」のか 厳しい中高年の転職
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