100年続く「ディズニーアニメ」の変化 子どもより大人がハマる秘められたメッセージ:グッドパッチとUXの話をしようか(3/3 ページ)
10月16日、ウォルトディズニーカンパニーは創立100周年を迎えた。ミッキーマウスの人気に伴い、その地位を確固たるものにしてきた同社だが、最近手掛けるアニメ映画のテイストに変化が見られる。一見子ども向けに見えるアニメにハマる大人が増えてきたのだ。どのようなメッセージが隠されているのかというと……
社会問題も伝え方で印象が変わる
筆者が1番「子ども向けと思わせて社会問題を提起している」と感じたディズニー映画は2016年に公開された『ズートピア』です。かわいい動物たちが登場人物の作品で、見た目は子ども向けですが、かなり作り込んだストーリーと込められたメッセージがとても奥深いと話題になりました。
強い警察官になることに憧れるうさぎのジュディと、夢を諦めた詐欺師のキツネのニックが主人公で、舞台はかつて争っていた肉食動物と草食動物が仲良く暮らす世界「ズートピア」。そこで、ある日突然、肉食動物たちが凶暴化する事件が起こります。
メインストーリーは、ジュディとニックが自身の夢をかなえる勇気にエールを贈る冒険ストーリーですが、実は差別や偏見について考えさせられるメッセージがたくさん隠れているのです。
「うさぎの仕事はにんじんを育てること。警察官は体が大きく筋肉が多い肉食動物がなるもの」といった偏見を嫌い、平等と誠実さを大事にするジュディですが、作中に「見た目で判断する」というシーンがいくつも隠されており、「偏見は誰にでもある」ということを伝えています。
「差別や偏見がよくないものである」というのも、差別反対といった一側面からの主観的な主張ですよね。この作品では「どんな主張もその人の主観であり、お互いの立場や主張を深く理解し、違いを認め合うことこそ世界をいいものにする」ということを伝えたいのだと解釈しています。
「偏見や差別」という難しいテーマです。しかし、かわいいキャラクターたちと夢を追いかける誠実な主人公や、その主人公が出合ういくつかのエピソードを通じて伝えることで、理解・共感しやすくなっています。
私たちUXデザイナーはUXリサーチでユーザーに話を聞くとき、話している内容だけではなく、その背景に潜む話し手の思いや伝えたいことに注目します。そうすることで、表面的な問題や期待だけではなく、本人も気付いていなかったような潜在的ニーズを見つけることができます。
子ども向けに作られた王道のハッピーエンドストーリーだけに気を取られず、その背景に隠されたメッセージを読み取るように、普段接している物事の背景に隠れた事実に目を向けてみたら、世の中ががらっと変わって見えるかもしれません。
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