「サステナブルな商品です!」 その商品の「宣伝方法」はどこまでエコなのか?(1/2 ページ)
サステナビリティの推進が世界的に求められている。サステナビリティと事業成長を両立させるために「エコな商品」の開発・販売に取り組んでいる企業もいるだろう。商品自体はサステナブルかもしれないが、その宣伝方法は果たしてエコになっているだろうか?
「当社はサステナブルな商品を販売しています!」といった宣伝文句を目にする機会が、ここ数年で急激に増加した。では、その商品の「宣伝方法」はどこまで環境に配慮されているのだろうか?
カラフルで派手な大型ポスターに大量のサンプリング、道行く人の目を引くデジタルサイネージなど挙げればきりがない。もちろん企業は継続的に事業を運営していく責務があるので、商品やサービスの宣伝は不可欠だ。しかし、そのやり方を少しでもサステナブルなものに変えられないだろうか。
持続可能なビジネスの必要性は日々高まっており、その流れに乗れなければ世界経済から摘まみだされてしまう。サステナビリティと事業成長を支える「宣伝方法」について考えてみたい。ポスターや看板、テントの内装印刷などを手掛ける、新潟の小さな印刷会社を取材した。
CO2ゼロ印刷、56トンのCO2をゼロに
サインディスプレイ事業を運営する「シンボ」(新潟県上越市)がCO2ゼロ印刷に取り組み始めたのはつい最近のことだ。顧客から「環境に配慮した印刷方法はないか?」という相談が増えたことをきっかけに、2023年4月に立ち上げた。
エコな印刷を実現するためにまず取り組んだのは、素材の変更だった。印刷に使用する素材を環境に配慮したものに変えるのだが、すぐにコスト面で課題に直面した。
「ディスプレイ広告の印刷には、プラスチックの一つである塩ビを多く使用しています。リサイクルしたエコな素材を使用することもできますが、機能性や耐候性が塩ビに比べて弱いです。何よりコストが1.5〜2倍に跳ね上がるので、全取り換えは顧客にとっても自社のビジネスとしても持続可能とは言えませんでした」(代表取締役社長 新保敬義氏)
印刷のクオリティという観点で、塩ビを使用しない選択は難しいことが分かった。そこで同社が取り組み始めたのが「CO2ゼロ印刷」だった。素材は変えられないので、自社の工場で印刷・加工する際に排出されるCO2を減らす方に舵を切った。
太陽光パネルを工場屋根に設置し、工場で使用する電力に充てる。使用分についてはクレジットを購入し、カーボンオフセットする。晴れている日であれば日中の太陽光で使用電力の95%程度をカバーできるが、夜間や天候が悪い日には2〜3割程度に落ちてしまう。新潟県は豪雪地帯でもあるので、冬は貯められるエネルギーも少なくなってしまう。
CO2ゼロ印刷事業を始めたのは今年の4月だが、昨年分をカーボンオフセットしたという。カーボンオフセット価格は非公開とのことだが、56トン分のCO2クレジットを購入した。
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