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格安ブランドがこぞって「銀座」を目指すワケ ダイソー、GU、オーケーが進出決めた“真の狙い”古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)

銀座にかつてない異変が起きている。ダイソー、GU、オーケーなどの庶民派ブランドが相次いで銀座に出店するようになったのだ。「高級街」に足を踏み入れた裏側には、どのような狙いがあるのだろうか。

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海外でも成功例が多い「一等地への大衆ブランド進出」

 大衆ブランドが銀座のような由緒ある一等地に進出する戦略は、日本独自の文化というわけではない。

 例えば、米国の大手ディスカウントストアチェーンであるTargetやブランド品の割引で有名なアパレル小売店T.J. Maxxは、ニューヨーク市内の一等地に積極的に出店している。両者はセントラルパークやハロルド・スクエアのようなマンハッタンの中でもさらに地価が高いエリアにも店舗ををオープンするなど、主要な商業地に位置する店舗戦略を展開している。

 世界で最も地価が高いエリアの一角に属するマンハッタンへの展開は、米国内ローカルの消費者の発掘だけでなく、グローバルの観光客などにとってもブランドに触れる契機となりうる。その結果、高い家賃はどちらかといえば広告やマーケティングにかかるコストに分類されるべきともいそうだ。

 日本人の消費者行動は、購買する商品に対する信頼感が非常に重要な要素となっている。そのため、信頼のおけるブランドが一等地に店舗を構えることで、消費者のそのブランドに対する信頼性や商品の質への信頼も高まるだろう。今回ピックアップした3つのブランドはいずれも国内売上高比率が高い。ただし、マクドナルドの成功例があることや円安トレンドを踏まえると、海外の格安ブランドが銀座に進出するような動きもみられるかもしれない。

「銀座」としても好都合?

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オーケー銀座店(同社公式Webサイトより)

 消費者の多様化に対応しようという動きは、企業だけでなく「銀座」の狙いでもあるかもしれない。

 高所得者や外国人観光客に焦点を当ててきた従来の銀座だが、時代と共に消費者のニーズも変化している。インターネットの普及により、消費者は価値ある商品をより手頃な価格で求めるようになり、その結果、庶民派ブランドに対する需要も増してきた。コロナ禍に起因したハイブランドの撤退も響いただろう。

 上記でも述べたとおり、オーケー、ダイソー、GUなど、価格競争力を前面に打ち出しているブランドにとって、銀座でのプレゼンスは、消費者に対する信頼性やブランドイメージの向上に寄与する。そして「銀座」としても、これらのブランドが銀座に集結することで、異なるセグメントの顧客層を引き寄せ、地域全体の消費活動を活性化させる効果が期待できる。高級ブランドと庶民派ブランドの共存は、さまざまな経済背景を持つ消費者が混在する多様な市場を形成し、それぞれの店舗間での相乗効果を生み出す可能性がある。

 しかし、この動きは同時に、都市の顔としての銀座のイメージ変容をも意味している。長年にわたり築き上げられた「高級の街」のイメージが、この庶民派ブランドの台頭によってどのように変わっていくのか、引き続き注目が集まる。

筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO

1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら


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