指示ナシ組織で中間管理職を救え!
では、そんな“忙しすぎる”中間管理職の負担を減らすために、企業にできることはないのだろうか?
木越氏は「自律共創型組織への転換」がキーワードになると話す。
従来までの「実行型マネジメント組織」では、マネジャーが目標を定め、戦略、計画を立て、指示を受けたメンバーがそれぞれの役割に合わせた業務を実行する。マネジャーのこれまでの知識や経験を生かせるほか、チームメンバー内で分業でき、仕事は効率的に進んでいく。
一方で「自律共創型の組織」では、マネジャーが1人でけん引するのではなく、メンバー同士が自律的に議論し、取り組むべき課題、ビジョンを決めていく。ビジョンには、メンバーの個人的目標を課題に取り込むこともできる。議論する人数が多い分、はっとするようなアイデアが出てくることもある。
「自律共創型マネジメント組織」では、中間管理職だけが担っていた目標設計や戦略立案の業務が減る(分散する)ので、マネジャー層の負担が軽減する。指示待ち組織ではなく、指示ナシ組織に生まれ変わることができれば、中間管理職は救われるかもしれない。
指示ナシ組織を実現するためにクリアすべきハードルは?
自律共創型組織への転換にあたり、クリアすべきハードルがいくつかある。
「組織長が、こういう働き方に変えていきたい、変えていけそうだという見通しを持てるかどうかが、1つ目のハードルになる」と木越氏。「メンバーから自発的に意見が出るだろうか、目標達成できなかったらどうしよう――という葛藤があり、動き出せない人も多くいます」と続ける。
これに対して、人事や経営層といった会社側の支援が重要になる。会社側が「うちはこの方向性で組織を変えていく」といったオフィシャルなメッセージを出すことで、中間管理職だけに掛かりがちな負荷を取り除くことにつながる。
また「社内外の“好事例”を発信することも重要だ」と木越氏は指摘する。
「現場では『本当にうまくいくの?』という疑問が出てくる場合があります。社内の好事例や取り組みを発信することで、従業員に『うちでもできるかも』という手応えを感じてもらえるかもしれません。
もちろん、業務や状況によって自律共創型組織にしやすい部署とそうでない部署で差があるはずです。それでも、取り組みやすい部署から始めていけば、それが良いモデルケースとなって、他の部署でも取り組もうという原動力になります」(木越氏)
管理職は、実は喜びの多い仕事
最後に木越氏は「管理職は、実は喜びの多い仕事でもあります」と話す。
メンバーの成長、裁量権や手掛けられる仕事サイズの大きさ、会社に認められているという自信など、管理職でしか味わえない喜びがあるはずだ。
「自律共創型組織では、一般の社員が、これまでマネジャーしかできなかった大きな仕事を体験できることもあります。自分のかかわった仕事が、会社全体にインパクトを与える可能性もあるでしょう。力を付け、今後より大きな仕事をしたい、上に立ちたいと考えている人にとっては、自立共創型組織への転換は追い風になるのではないかと考えています」(木越氏)
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