新生モーターショー ホンダの展示に見た、実用化への執念:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/3 ページ)
10月25日から開催中の「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」。今回、注目すべきはホンダと言えるでしょう。ホンダが展示したモビリティには、ある共通点があったのです。
ホンダが大真面目に展示した“日本の明日”
そして本命であるクルマは自動運転車「クルーズ・オリジン」、2人乗りの自動運転車「CI-MEV(シーアイ・エムイーブイ)」、再生樹脂を使用した「SUSTAINA-C Concept(サスティナ・シーコンセプト)」、そしてハイブリッド・スポーツの「プレリュード・コンセプト」と、北米で発売予定のSUVのEV「プロローグ・プロトタイプ」が並びました。
そんな中でもクルーズ・オリジンとプレリュード・コンセプトは、今回のホンダの中でも目玉的な存在と言えます。
自動運転車は、タクシー・バス業界の人手不足解決の切り札として非常に大きな期待が寄せられています。その一方で、自動運転車は最近、福井県の実証実験車が事故を起こしています。また、北米でもトラブル発生による運行一時停止が話題になりました。
とても注目されている一方で、まだまだ技術的に高いハードルを超えなければならない技術ということです。クルーズ・オリジンは26年からタクシー・サービスを実施する予定ですが、その高いハードルを乗り越えて、本当に開始することができるのか? これから3年間の技術開発に期待を寄せたいところです。
また、プレリュード・コンセプトは、今回のJMS2023では、数少ない市販間近なモデルです。ポイントは、EVではなくハイブリッド車であること。しかも、4人乗りのクーペ。今、国内ではスポーティな4座クーペは超少数派です。
ライバルとなるのはトヨタ「GR86」とスバル「BRZ」の兄弟車、そしてレクサス「LC」、さらには日産「GT-R」です。ただ、プレリュード・コンセプトは、サイズ感からいえば高くても400万〜500万円という価格帯が予想されるため、ライバルは1000万円超えのスーパーカーである「LC」と「GT-R」ではなく「GR86」「BRZ」となりそう。スポーティクーペはニッチだからこそ、プレリュードが発売されれば、そのジャンル内ではインパクトある数字を残せる可能性もあります。
このように展示内容を振り返って気付くのが、ホンダはコンセプトとは言いながら、リアルに市場に登場しそうな存在が多いということです。自動運転車のクルーズ・オリジンは、26年のタクシー・サービス開始に向けて開発中ですし、プレリュード・コンセプトとプロローグ・プロトタイプは、ほぼ量産車という仕上がり。ホンダジェットは実際に売っていますし、Honda eVTOLも開発中です。UNI-ONEは体験試乗も可能ですから、量産化も遠い夢ではありません。
JAPAN MOBILITY SHOWのようなショーの本質は、お祭り=にぎやかしです。そんな中、ホンダは“電化された未来”というよりもっと近い、“日本の明日”を大真面目に提示していたと言えるのではないでしょうか。
筆者プロフィール:鈴木ケンイチ
1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。
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