本社を“大規模改装”した日本ロレアル 出社率上昇で生じた課題は?:ハイブリッドワークの挑戦と舞台裏(2/2 ページ)
日本ロレアルは2022年10月、新しいオフィス「ビューティーバレー」に“大規模改装”した。同社で広報・渉外本部長を務める七尾藍佳さんに、ハイブリッドワークの課題を聞く。
形骸化した定例会議は定期的に整理
――コロナ禍で始めて、ハイブリッドワークでも継続導入したものの、現在は止めている制度やルールはありますか?
コロナ禍で一部フレックスタイム制を始動させました。こちらが好評なので完全フレックスに移行しました。一方で、特に現在廃止した制度・ルールなどはありません。一部チームごとに、エンゲージメントを維持するためにコロナ禍以前よりも部門ごとの会議を増やした事例では、現在は通常に戻っているケースも見られます。
――ハイブリッドワークに移行するタイミングで新設した制度・ルールで成果を実感できているものはありますか?
上述のフレックスタイム制に加え、グローバルでワークライフバランス改善を目指して実施している取り組みがあります。
例えば「業務時間外のメールやチャットの送信を原則行わない」「会議の時間は1時間だったものを45分を基本とする」「形骸化した定例会議は定期的に整理する」「月曜と水曜日の午前中などを『ノー会議』の時間とし、社員が集中して行いたい業務や、チーム作りや学習に充当できる時間をグローバルに設ける」といったことです。
この取り組みによって、社員のバーンアウト(燃え尽き症候群)を防いでいます。きちんとリチャージし、心身ともに充足した状態で、活力をもって仕事ができる環境整備に尽力しています。
――ハイブリッドワーク運用の中で見えてきた課題は何ですか?
在宅勤務をどう捉えるかは、社員の特性やプライベートの環境に左右される部分が大きく、全体として合意を得ていくことは難しいものであるとは感じています。一方で、ポストコロナの生活が定着しつつある中、コロナ禍が非常に厳しい状態での完全在宅勤務は、緊急時の特殊な状態であったと多くの企業や働く方が実感しつつあると思われます。
弊社のように、創造性とインスピレーションが事業のコアとなっていて、付加価値創出に必要不可欠な企業では、やはり対面での業務と協働作業が非常に重要です。一方、社員個々人のニーズ、特にライフステージに応じてフレキシブルな働き方を選択したいという希望に応えることも「ひと」を軸とするロレアルにとっては大切です。
この2つの視点のバランスを取ることが大きな課題ではありますが、決して対立するものではないと考えています。一人一人の声に耳を傾け、個々の状況に柔軟に、かつ「人間らしく」取り組みさえすれば、常に最適なバランスを見つけられると確信しています。
――この課題解決のために取り組んでいることはありますか?
定量面ではコーン・フェリー社のパルス調査を年1回実施し、社員の声を取り込んだ改善策を見つけることに尽力しています。加えて、新たに加わった構造改革・働き方改革の進捗把握のため、追加的な調査も実施しています。
定性面では、定期・不定期で社員のヒアリングを人事、上司、部門ごと、あるいは部門横断的に行っています、多種多様なワークフォース(従業員)の声を聞き取る努力をし、ニーズにあわせて迅速に求められている対策や改善を実施しています。
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