「ヒラだとその程度でいいんだ」「責任なくていいよね」「負荷の少ない仕事で毎日褒められていいよね」「どうやってクライアント丸め込んだの」――こういったチクチクとした嫌みは、パワハラになるのでしょうか?
今回は「チクチク言葉」について解説します。無視されているわけでも、イカつく怒鳴られているわけでもないけれど、ふと涙しそうになったり、虚無感に襲われたりする“あの言葉”です。皆さんは、自分の思い通りにいかないことを言い訳に、チクチクと周囲に醜い行動をとっていませんか?
「あ、その程度でいいんだ」 これってパワハラ?
先ほど紹介したチクチク言葉は、いずれも職場での上下関係と、何らかの業務命令があって、そこで発生している言動です。ここではパワハラになりやすい上司のマインドと業務命令の線引きについて解説していきます。
業務命令とは
業務命令とは使用者が従業員に対して発する業務上の指示や命令のことを言います。またその内容は業務遂行のために必要で合理的なものに限られます。
パワハラとは
パワーハラスメントとは、職場において行われる(1)優越的な関係を背景とした言動であって、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)労働者の就業環境が害されるものであり、(1)から(3)までの3つの要素を全て満たすものとされています。
例えば「このレベルまで仕上げてほしいのにできていない」といった事象があったとしましょう。ここで、明確な納期や分かりやすい数値を提示して「このレベルで仕上げてほしかったが、できていなかった。どこでつまづいてしまったかを教えてほしい」と落ち着いて説明すれば、業務遂行のために必要で、合理的な指示、つまり業務命令の範囲といえます。
対して「ヒラだとその程度でいいんだ」という言動だった場合、業務遂行のための指示として、どこがどうできなかったのかという具体性適格性に欠け、合理的な業務命令とは言えません。また、その言葉を受けた側も業務指示とは受け取れずただ腹立たしく、就業環境が害されたと感じる人もいるでしょう。
何か達成できていないことについて、その人自身を否定するような言葉は業務上必要ではありません。どこができなかったのか、次はどう工夫すれば達成できるのかなど、業務遂行するための表現の仕方で適切な指導に切り替えてください。
昨今はハラスメントの規制が強まり「何でもパワハラといわれてしまうのでは?」と上司側が委縮してしまうケースが多々ありますが、指示や命令は業務遂行のため当然必要なことです。そこで正しい言葉を使うのか、自身の敵意を乗せてしまうのかで、その後が大きく変わってしまうのです。
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