米スターバックスの「男女格差対策」がすごい 日本企業でもマネできる一歩は(2/3 ページ)
日本のジェンダー不平等は世界的に見て深刻な状況にあります。なぜ今、ダイバーシティ推進に力を入れる必要があるのか、また、社内のジェンダー不平等にどのように対応・開示していけばよいのか、米スターバックスの事例をもとに解説します。
米スターバックスは、男女賃金差を含むペイギャップ(賃金格差)の解消に取り組み、成果を残しています。男女賃金差はさまざまなジェンダー不平等状況の結果として起こるため、その解消には包括的な取り組みが必要です。
その点において、スターバックスが実践した要因分析と、その分析結果に基づく施策の検討・実行は非常に参考になります。スターバックスでは米国における男女賃金差の要因を7つに整理しています。
(1)採用時の給与が採用を担当したものの主観で決定され、既存の偏見の影響を受けてしまう
(2)採用時の給与額が過去の給与水準に基づくため、既存のペイギャップが修正されずに続いてしまう
(3)企業内の役割に応じた給与レンジの透明性が不足している
(4)女性が介護や育児の責任を負うことが多く、その結果、仕事上の機会が少なくなる(いわゆる母性ペナルティ(motherhood penalty))
(5)昇給やボーナスが上司の主観で決定され、既存の偏見の影響を引き継いでしまう
(6)女性はより高い報酬の管理職や指導的地位に就く可能性が低く、結果として女性の給与が低くなってしまう
(7)差別や報復を恐れて、従業員が給与について問い合わせたり確認したりできない
このうち、例えば要因(6)「女性はより高い報酬の管理職や指導的地位に就く可能性が低く、結果として女性の給与が低くなってしまう」という点に対しては「全従業員に平等な機会を提供するインクルージョンの文化を育むことにコミット」「マネジメントやリーダーシップにおける女性の数・割合などの目標を設定」などの具体的な対応を進めています。
これらの要因やその対応の中には、米国企業で特に顕著なものや日本企業の文脈には必ずしも合致しないものもあります。例えば、日本では女性が特定の職種に固定化されることに伴う格差などが多く語られる傾向にあります。また、実際の施策としては開示されている内容をもう一段ブレークダウンして、具体的な取り組みを進める必要もあると考えられます。
重要なことは、自社にとっての男女賃金差やジェンダー不平等について、何が原因で現在の状況にあるかをきちんと分析し、その分析結果に基づいた施策の検討、実行をすることです。
なお、スターバックスは労働法違反や労組との対立といった問題が指摘されている現状もあり、全ての取り組みについて万能というわけではありません。しかし、丁寧に要因を分析し、ジェンダー不平等の解消に向けた取り組みをしているという点で、分かりやすい好事例といえます。
日本国内でも、フリマアプリ大手のメルカリが23年9月に男女賃金格差の状況を含む報告書を公開し、社内の賃金格差の実態を詳細に分析。原因となった慣行を見直す方針を決めており、国内でも要因分析と打ち手の検討が進むことが期待されます。
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