「LINEヤフー」が市場から評価されないワケは、“サービスの自己矛盾”にある:どうあるべきか(1/3 ページ)
LINEとヤフーが合併したが、市場関係者からの期待感はイマイチだ。その要因は、サービスそれ自体の「自己矛盾」にある――。
10月1日にLINEとヤフーが合併して誕生したLINEヤフーHDは、市場関係者からの期待感はイマイチである。それを顕著に表す指標がPBR(株価純資産倍率)だ。同社のPBRは1.11倍で推移している。
PBRが1倍を割ると、今の企業価値が保有資産を下回ることを意味するため「会社を続けるよりも、すぐに解散して資産を株主に分け与えた方がメリットが大きい」と評価されているに等しい。LINEヤフーのPBRはその水準に肉薄しているのだ。
他の企業に目を移すと、モバイル事業の苦戦が続く楽天のPBRは1.09倍。LINEヤフーとほぼ同水準だ。経営統合で大きな一歩を踏み出したようにも思われるLINEヤフーだが、PBRでみた市場の期待は、苦境の続く楽天並みといっても過言ではない。
ではなぜ、同社の企業価値は低めに評価されているのか。
「コングロマリット・ディスカウント」に陥るリスク
LINEヤフーのように、企業合併などを通じて数多の事業を展開するに至った企業は「コングロマリット・ディスカウント」が発生し、企業価値がつきにくくなるという傾向がある。コングロマリットとは日本語で複合企業体ともいわれ、多角化したビジネスの集合体としての性質を有する企業のことをいう。
「餅は餅屋」ということわざにもあるように、一つの事業にリソースを集中投下する企業と、M&Aなどを通じて業容を拡大してきた企業とでは、前者の「餅屋」の方が顧客満足度の高いサービスを提供してくれそうだという期待が大きい。
このようにコングロマリットでは、多岐にわたる事業が持つ複雑性や、経営効率の低下などによって各事業がドミノ倒し的に「餅屋」に負けてしまうというリスクがあり、それが連鎖するリスクを孕(はら)んでいる。従ってコングロマリットの株式評価は割り引かれることが多いのだ。
楽天でいえば、異業種であったモバイル事業が苦戦したことで楽天グループ本体の株価が大きく落ち、子会社の楽天カードや楽天証券の株を売るなどして自社の優良事業を手放すというリスクがその典型例だ。
では、PBRが楽天とほぼ同水準であるLINEヤフーはこのコングロマリット・ディスカウントに陥っているのだろうか。この点について、同社が展開する事業の多様性とそれに伴う経営の複雑性を考察したい。
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