「今何してる?」束縛系上司がどんどん時代遅れになるワケ:働き方の見取り図(3/4 ページ)
人口減少が進み、職場環境も大きな変容を遂げている。経営者や管理職はこれからの会社組織を率いていくために、どんなマネジメントが求められるのか。
社員の時間は会社が独占できる?
次に、時間認識に対する前提も崩壊しました。社員は誰もが家事、育児、介護に時間を割くようになり、テクノロジーの発展で空き時間を使った副業などもしやすくなっています。社員が会社の仕事以外にも複数の社会的役割をかけ持ちすることは珍しくなくなりつつあります。
これまで社員の時間は、基本的に会社の拘束を受けてきました。上司は退勤しようとしている社員を呼びとめて「この仕事、急ぎで仕上げてくれないか」と気軽に指示したりしました。また、帰宅後や休み中でも「今何してる?」と社員に連絡を入れ、仕事だからと当然のように報告や出社を求めるようなことも起きがちでした。
背景には、“社員の時間は独占できる”という上司の前提認識があります。しかし、会社の仕事以外にも社員が複数の役割を持つ時代には、完全にズレた認識です。社員が有する時間は社員自身のものであり、上司は勤務時間を除いて社員を束縛することはできません。
最後に、終身雇用時代の前提だった“社員は辞めない”という認識も崩れています。終身雇用を前提としていると、社員はまず入社した会社で定年まで勤め上げることを目指します。嫌な思いをするようなことがあっても、耐え続ければ生涯の生活は保障されました。
ところが、経団連会長が「終身雇用なんてもう守れないと思っている」と発言したように、会社側は既に新卒入社した一社だけで生涯勤め上げるというモデルに限界を感じています。社員側は、終身雇用が守られないなら辞めることを視野に入れざるを得ません。
また、人口減少とともに労働力の母数も減少の一途を辿り、13年11月以降の求人数は求職者数を上回り続けて採用難が慢性化しています。一方、仕事探しのサービスは拡大して転職する手段は増えており、キャリア自律意識の芽生えと相まって、いまやどんな社員でも辞める可能性があります。
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