止まらない退職で、崩壊寸前のチーム 新卒4年目リーダーの逆転劇(2/2 ページ)
新卒4年目でリーダーに就任。何もかも手探り状態の中、メンバーは次々と退職していく。信頼を寄せていたサブリーダー社員から退職を告げられた日は、帰宅後に後悔と悲しさで“ガチ泣き”したという。チーム崩壊──そんな言葉がよぎるような状況から、いかにして再建を成し遂げたのか。
1on1で気付いたこと
疲弊しきったメンバーをつなぎとめるために高田氏が取った手法が1on1だった。退職率を減らせたと、他部署で耳にしたからだ。この時点で、リーダー就任からすでに5人が退職していた。
メンバー全員と、それぞれ隔週で1on1を行った。何度か繰り返すうちに、メンバーと自分との間に信頼感が生まれ、チーム全体がまとまっていくのを感じられた。実際に、退職者数も次第に減少していった。
「信頼関係が生まれた結果、チームとして問題解決に当たれるようになった。リソースが逼迫(ひっぱく)したら調整する、トラブルが起きたら相談してもらうといった対応ができた」と高田氏。
「自分の未熟さゆえ、成長のヒントを与えられなかった」との後悔もあるが、意外な発見もあった。メンバーは現状に対するネガティブな思いを吐き出す場所がなく、溜め込んでいる状況だった。高田氏は淡々と受け止め、メンバーが抱えていたフラストレーションを解消するようにしていった。
こうしてチームの再建が軌道に乗り始めたように感じた矢先、さらなる悲劇が起きた。高田氏が信頼を寄せていたサブリーダーが突然、退職してしまったのだ。
どん底の中で差し伸べられた救いの手
悲しみのあまり「家に帰って泣いた」と、高田氏は当時のことを振り返る。チームメンバーの中からサブリーダーに指名するほど頼りにし、チームの再建について長時間議論を重ねる相手だったから、というだけの理由ではない。「カヤックという会社に対して希望をもって入社してくれたのに、苦しんでいることに気付けず、何もケアできなかったことの後悔」からだという。
しかし、救いの手も差し伸べられた。見かねた代表取締役の1人が、社外からPM経験の豊富な人をアドバイザーとして連れてきたのだ。他にも「新鮮な切り口で問題提起ができるのでは」との期待があった新人1人と、経験者2人を含めた4人をアドバイザーとし、PMチームの再建について話し合う機会が設けられた。
ミーティングを通じ、PMチームが抱える本質的な課題が見えてきた。疲弊の原因は、メンバー各自が我流で業務を行っていたことからくる「自信のなさ」である、との結論に至ったのだ。
そこで、認識を統一するため、PMの方法論をまとめたPMBOK(ピンボック)の勉強会を週1で実施することにした。定例会自体は14年のチーム発足当初から行っていたが、内容はより「ふわっとしていた」(高田氏)という。
そこに意義を持たせた結果、チーム内にPM業務についての共通認識が生まれた。進行用共通フォーマットを作成し、利用することで業務が円滑になっていった。統一化によってコミュニケーションも密になり、メンバー各自に自信が生まれ、疲弊感が減り、退職率は下がったという。
「PMBOKの勉強会を半年行った結果、あくまでも主観ですが、メンバーの表情が生き生きとしだした、という手応えを感じられました」(高田氏)
「和を以て貴しとなす」──これは、高田氏がチーム運営で最も重視している原則だ。
「PMBOKの勉強会は、あくまでもミーティングに参加する意義を見いだす手法にすぎなかった。その副産物が業務への共通認識だっただけ。全員で1つのことに取り組んだことが、チームの一体感を醸成したのではないでしょうか。
仲が良ければなんとかなる。お互いに素直に意見を言い合える状態、心理的安全性を確保するような方法が自分流のマネジメント。チームビルディングにおいて私が最重視するポイントです」(高田氏)
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