新しい「音楽の聖地」になれるか 横浜みなとみらいに“規格外”のアリーナが生まれたワケ(5/5 ページ)
9月29日、みなとみらい21地区に2万席超、世界最大級の音楽に特化した「Kアリーナ横浜」が開業した。音響の良さ、どの席からもアーティストを正面から見られる扇形、千鳥配置の客席設定、座っていて疲れないファブリックシートなどについては報道されている。しかし、Kアリーナにはそれ以外にもいくつか画期的な点がある。
Kアリーナの最終的な目標
今後のKアリーナの稼働率目標は、一般的なアリーナの70〜75%を少し上回る80%を設定している。1年365日のうち、設備点検などで休業せざるを得ない日が30日程度。残りの日数のうちの8割が設営、興行で借りられている状態を目指すという計算だ。具体的には、年間で150日くらい公演が行われる計算になる。
アリーナのコンスタントな稼働に加えて、目指すのは横浜駅東口エリアに新たなにぎわいを生むことだ。現在、みなとみらいといえば多くの人がランドマークタワー、クィーンズスクエア界隈をイメージするだろう。
だが、横浜駅東口周辺にはスカイビル、横浜ベイクォーターなどの商業施設が集積しており、Kアリーナとの間には夜景も美しい水辺が広がる。Kアリーナの隣には横浜初上陸となるホテル・ヒルトン横浜もあり、アリーナ入口は人口地盤で一段高くなった開放的なテラス空間となっている。
加えて、現在、みなとみらい大橋とアリーナを結ぶ歩行者デッキ「(仮称)高島水際線デッキ」が建設中で、これが完成すれば横浜駅東口側の回遊性は一気に高まる。海外からも人を集めることができる音楽の力で地域を変える。それがKアリーナの最終的な目標というわけである。
著者プロフィール
中川寛子(なかがわ ひろこ/東京情報堂代表)
住まいと街の解説者。(株)京情報堂代表取締役。路線価図で街歩き主宰。
40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくりその他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
主な著書に「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版社)など。宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。
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