新しい「音楽の聖地」になれるか 横浜みなとみらいに“規格外”のアリーナが生まれたワケ(4/5 ページ)
9月29日、みなとみらい21地区に2万席超、世界最大級の音楽に特化した「Kアリーナ横浜」が開業した。音響の良さ、どの席からもアーティストを正面から見られる扇形、千鳥配置の客席設定、座っていて疲れないファブリックシートなどについては報道されている。しかし、Kアリーナにはそれ以外にもいくつか画期的な点がある。
早めに動いて底値で資材調達
ビジネス的には資材高騰の局面において早々に施工会社を選定、早めに資材を手配しておいた点にも注目したい。
施工会社の選定は、基本設計を経て実施設計に至った時点で行われるのが一般的だ。だが、Kアリーナでは基本設計が終わった時点から選定がスタートした。3棟で構成される1つの建物で規模が大きい上に、構造が特殊で難易度が高いことが分かっていたため、早い段階からパートナーとして協業することでコストの削減と質の向上、この2つを目指そうと考えたのだという。
「ゼネコンにはそれぞれ得意とする技術があります。それに適した設計にすることで無駄やコストを省き、質を担保しようと考えたのです」(鳥山氏)
実際に施行会社が決まったのは着工の1年前、19年8月。ちょうど資材の価格が上がり始めたタイミングだった。その一方で、東京五輪後には地価、物価が下がるのではないかという風評もあった時期だ。実際にはその後にコロナ禍、そしてロシアのウクライナ侵攻などで資材価格は爆上がり。現在もその状態が続いている。
だが、施工会社を早く決めたことで資材の調達が早く、しかも底値でできた。それが質を下げることなく、目に見えないところでのコストセーブにつながったという。計画通りにオープンできたのもその結果というから、社会が変化している時期には早めの行動は吉といえそうである。
関連記事
- 東京23区にも“秘境”があった! 秘境駅になってしまう大きな2つの要因とは?
3月17日〜5月7日、JR東日本が「東京23区内秘境駅ラリー」なるイベントを開催した。23区内には100人いたら90人くらいが駅名を知らない、その駅で降りたことがないという秘境駅が存在している。ラリーで取り上げられた駅を含めて秘境駅を紹介するとともに、なぜ秘境なのかを分析していこう。 - オーシャンビューなのに2000万円台 単身女性が買う「海の見える家」の正体とは?
三浦海岸できちんと目の前に海が見えるリゾートホテルが、分譲マンションにコンバージョン(建物の用途変更)して販売されているという。しかも、高騰する都心部に比べると価格もお手頃。進化するコンバージョンと、海の見え方を確認しに三浦海岸に向かった。 - 高円寺はなぜ、吉祥寺に勝てないのか 街とジェンダーの“なるほど”な関係
「個性的な店が減った」「観光地化している」とあれこれ言われながらも長らく人気の街、吉祥寺。中央線沿線にはより都心に近い駅もあるが、それでも吉祥寺は頭1つ抜けている。その理由をジェンダー的観点から解説しよう。 - 人気店やスタートアップでにぎわう五反田 一方、懸念される建設ラッシュ
便利だが猥雑、どこかもさっとした印象のあった五反田駅周辺が変貌しつつある。駅周辺で複数の大規模な開発が進み、予約の取れない居酒屋が話題になり、スタートアップが多く集まっている。五反田に一体何が起きているのか。 - トップ3も過去の話 なぜ恵比寿は「住みたい街」常連から陥落したのか
住みたい街ランキングで、10年近くトップ3を独占していた横浜・吉祥寺・恵比寿のうち、恵比寿が4位に転落した。なぜ恵比寿は、住みたい街の常連から転落したのか。住まいと街の関係に詳しい、東京情報堂の代表を務める中川寛子氏に話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.