新しい「音楽の聖地」になれるか 横浜みなとみらいに“規格外”のアリーナが生まれたワケ(3/5 ページ)
9月29日、みなとみらい21地区に2万席超、世界最大級の音楽に特化した「Kアリーナ横浜」が開業した。音響の良さ、どの席からもアーティストを正面から見られる扇形、千鳥配置の客席設定、座っていて疲れないファブリックシートなどについては報道されている。しかし、Kアリーナにはそれ以外にもいくつか画期的な点がある。
自前の設備がもたらした思わぬ効果
自前の設備を備えることで設営日が短縮でき、アリーナの利用日数が増え、稼働率が上がることを狙ったわけだが、その判断が思わぬ評価を生んだ。人手不足への対処である。
コロナが明け、世の中では人手不足が深刻化している。東京商工リサーチによれば2023年1〜10月に発生した人手不足関連倒産は128件。年間最多の19年に迫る勢いだが、人口が減る中、今後も問題が解消される展望はない。
当然、音楽業界でもスタッフが集まらないためにライブができないという事態が生じている。昼夜どころか徹夜もある設営作業、何日も地方を回るツアー行脚は過酷でもあり、これまではやってこられたとしても、労働時間に厳しい目が向けられるこれからの時代では、今まで通りのやり方は続けにくい。
そこに、スタッフの人数、労働時間を減らすことができる設備が完備された会場があるとしたらどうだろう。会場利用費が他より高くても、これまで1日のコンサートのために設営日3日を加えて計4日間借りる必要があった会場費が、設営1日、コンサート当日の2日で済む。充実した設備が、音楽業界の人手不足を救う一手になるわけだ。
また、設備が常設されていれば無駄な設営、解体を減らすことにもつながり、環境への負荷も軽減される。その設備類を使いこなすため、通常はツアーに帯同するエンジニアを会場に常駐させるという仕組みも用意されている。
もう1つ、海外からのアーティストを呼びやすくもなる。日本にはニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン、英国のマンチェスター・アリーナやO2アリーナのような2万人規模以上でワールドツアーを呼べるようなアリーナはさいたまスーパーアリーナ(最大3万7000人)、東京ドーム(最大5万5000人。いずれもコンサート利用時)くらい。
そのうち、東京ドームは野球が優先されるため、意外にワールドツアー開催は少ない。そもそも競合する施設が少ない上に、設備面のプラスがあれば選ばれる可能性は高くなる。Kアリーナへのライブニーズが一気に高まるかもしれないのだ。
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