せっかくの晴れ舞台でなぜ? 新生モーターショーで“紹介されなかった”クルマたち:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(2/3 ページ)
11月5日まで東京ビッグサイトにて開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」。メーカー各社は気合いの入った出品車を披露しました。その一方で登場しなかった、もしくは華々しく紹介されなかったクルマたちも存在します。
紹介されなかったクルマたち
トヨタでいえば、新型「クラウン(セダン)」が会期中の11月2日に発売されました。これは10月25日のプレスデーでは一切紹介されず、一般公開日にさりげなくブースに展示されていた1台です。開催直前の10月にもレクサスの高級ミニバン「LM」(19日)、新型「クラウン(スポーツ)」(6日)をそれぞれ発売しています。残念ながら、これらのクルマの展示はありませんでした。
会期後の11月9日にはレクサスのコンパクトSUVとなる新型「LBX」を発売。14日には米国市場向けに新型「カムリ」もお披露目しました。これだけの数の新型車をJMS2023の前後に用意することは、他社にはなかなか難しいもの。「さすがトヨタ」といえるラインアップです。
また、日産はJMS2023と同じタイミングで、世界市場向けに4台のインフィニティを発表しています。EVセダンの「ビジョンQe」、EVのSUVとなる「ビジョンQXe」のコンセプト、来年の発売を予定しているフラッグシップSUV「QX80」、クロスオーバークーペ「QX65」です。この4台はどれも海外市場向けで、日本での発売予定はありません。
ホンダは会期後の11月7日に、オートバイ用の世界初の「Honda E-Clutch(ホンダ イークラッチ)」という技術を発表しました。これは、クラッチ操作なしのオートマチック走行とクラッチ操作アリの走行の2つを両立する技術です。JMS2023のホンダブースは技術的な展示が多いのも特徴でしたが、これも展示されていませんでした。
そしてマツダも、本来あってしかるべき新型車の姿がありませんでした。それがロータリーエンジンを発電機として搭載し、EV走行を行う新型「MX-30 Rotary-EV」です。海外ではすでに発売済みですが、国内でも11月から発売しています。
JMS2023の後に、MX-30 Rotary-EVに試乗する機会がありました。走らせてみれば、モーター駆動ですが他のマツダ車と同様な「人馬一体感」が楽しめます。また、アクセルやペダル操作に対して、音量が変化するEVサウンドもありました。音量は非常に小さなものでしたが、これも「人馬一体感」の実現に貢献しています。ちなみにロータリーエンジン音は、アクセルを深く踏み込んだときなどに耳にすることができますが、音程が低く、音量も非常に小さなものでした。
搭載されている電池は17.8kWhで、フル充電ならば107キロ(WLTCモード)のEV走行が可能。その先は、15.4km/L(WLTCモード)の燃費で、50リットルの燃料分だけシリーズハイブリッドとして走ることができます。計算上は、107キロのEV走行の後に、770キロもハイブリッドで走り続けるのです。普段はEV、そして週末のロングドライブはハイブリッド車として使えるという便利なクルマです。
試乗して感じたのは、モーター駆動であってもマツダらしい走りの良さがあり、それでいて利便性が高いということです。しかも、MX-30 Rotary-EVの価格は、423.5〜491.7万円。ライバルとなるトヨタの「RAV4プラグインハイブリッド」や、三菱自動車「アウトランダーPHEV」と比べると割安感があります。マツダの電動車の主力になりそうな予感を漂わせるクルマといえるでしょう。
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