せっかくの晴れ舞台でなぜ? 新生モーターショーで“紹介されなかった”クルマたち:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/3 ページ)
11月5日まで東京ビッグサイトにて開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」。メーカー各社は気合いの入った出品車を披露しました。その一方で登場しなかった、もしくは華々しく紹介されなかったクルマたちも存在します。
一大イベントで、あえて紹介しないワケ
ちなみにJMS2023に参加しなかったヒョンデも、会期中の10月30日に新型EV「KONA(コナ)」を発売しています。ミッドサイズのSUVタイプのEVながら、399.3万円からという戦略的な価格で拡販を狙う意欲的なモデルです。
これらの新型モデルが、大々的にJMS2023で披露されなかった背景には、それぞれのメーカーの深い考えがあったはずです。本来、100万人を超える人が来場するのであれば、なるべく自社の新型車をそろえて見せた方が、商売的には有利なように思います。
しかし、そうしなかったのは、JMS2023が「モビリティ」を主題にしてエンターテインメント性を高めたイベントに生まれ変わったから。「あまり商売に色気を出すのは無粋」と考えた可能性があります。また、当然ですが、出品の内容は各社ともに大きな販売戦略を元にしているわけですから、そこでの判断であったことは間違いありません。
どちらにせよ、世界市場でビジネスを行う自動車メーカーは、日本だけでなく世界各地のショーに参加しています。また、製品としても、それぞれの市場向けのモノを用意しています。だからこそ、東京のショーだけに、全ての手をさらすこともないというわけ。ある意味、JMS2023で紹介する、しないという引き出しの多さこそが、そのメーカーの底力といえるでしょう。
筆者プロフィール:鈴木ケンイチ
1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。
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