各地で進む“建設的な議論” 行く先は?
JR東日本としても、運輸事業(鉄道事業)の命運を握る「ご利用の少ない区間」に、手をこまねいている場合ではない。すでに合理化が限界に近い線区も多く、利用が低迷する区間を優先して「持続可能な交通体系について建設的な議論をさせていただく」としている。すなわち「地元負担による鉄道存続」「バスなどへの転換」だ。
「ご利用の少ない線区」34路線・62区間のうち、営業係数ワースト1位の久留里線・久留里駅〜上総亀山駅間は、23年3月にJR東日本から「総合的な交通体系に関する議論」を申し入れている。実質的に、バス転換への模索が始まったといえるだろう。
災害による区間運休が続く津軽線は、末端区間の廃止を打診。すでに一部の自治体が容認する意向を示している。いわば、「バス+デマンド(予約制)タクシー」というJR東日本からの“手土産”に、地元自治体が理解を示したという例だ。
ほか、11年の豪雨災害から区間運休が続いていたJR只見線は、90億円という復旧費用の3分の2を地元が負担。開通後は福島県が鉄道施設を保有する「上下分離方式」を取り、運行にかかる経費も地元自治体が負担するという条件で、22年10月に全線復旧を果たした。
こちらは、ほとんどの経費を地域で負担するため、運行する側にとっては「今後支払う経費ほぼナシ、運賃収入はアリ」という条件であり、JR東日本側が理解を示した例だ。
しかし、幹線鉄道ならではの事情がある羽越本線・奥羽本線などについては、JR東日本の負担減に関する議論は進んでいない。今後は国が各地域との話し合いのために用意した「再構築協議会」に基づいて、鉄道でできること(多量輸送)を生かした「需要増による鉄道存続」、鉄道以外で役割を担う「地域の動線に合ったバス転換」などが行われていくだろう。
宮武和多哉
バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。幅広く各種記事を執筆中。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護に現在進行形で対処中。
また「駅弁・郷土料理の再現料理人」として指原莉乃さん・高島政宏さんなどと共演したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」(既刊2巻・イカロス出版)など。23年夏には新しい著書を出版予定。
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