新連載・宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く:
乗り物全般ライターの宮武和多哉氏が、「鉄道」「路線バス」「フェリー」などさまざまな乗りもののトレンドを解説する。
全国で12万人以上も必要とされているバス運転手が、現時点でも1万人ほど不足している。極度の運転手不足を背景にした、バス減便・廃止の流れが止まらない。
2023年11月の「主要路線バス運行状況調査」(帝国データバンク調べ)によると、調査対象の127社のうち、実に98社が人手不足によるバス路線の減便・廃止に踏み切っているという。同調査では今後もさらに人材不足が深刻になると見通しており、30年には3万6000人の運転手が不足すると予想している。
こういった減便・廃止の傾向は、過疎化が進んでいるような地方では珍しくなかった。しかし現在、今や人口100万人規模の中核都市や、首都圏の近郊でも、同様の事例が相次いでいる。
大都市でも「630便減便」「廃止」相次ぐ
道内最大手の「北海道中央バス」は、4年前には1300人も在籍していた運転手が現在は約1100人となり、1割以上も激減したという。この運転手不足を受けて、人口195万人を擁する札幌市を中心に、約630便という過去最大の減便を決定した。
市内路線では、所要時間がかかる札幌市中心部への乗り入れを中止し、最寄りの地下鉄駅まで運行区間が短縮される。なお路線バス→地下鉄の乗り継ぎ割り引きはなく、利用者にとっては実質的な値上げとなる見通しだ。
北海道では他にも、札幌〜函館間を結ぶ都市間バス(高速バス)「高速はこだて号」が、運転手不足を理由として1日8→4便に減便。共同運航を行う4社のうち、道南バスが完全撤退した。路線バス・高速バスともに長距離路線が多い北海道では、バス運転手不足の影響が各方面で続出している。
また、大阪市近郊の富田林市などをエリアとする金剛バスは、全15路線を23年12月20日に廃止することを表明。沿線自治体は支援を提案したものの、同社は30人の必要人員に対して、自社で17人の運転手しか確保できていない状態だ。「補助金を受け取っても運転手がいないので事業を継続できない」と申し出を断り、実質的な会社の閉鎖を決断したという。
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