「たまごっち」ブーム再来 25年も経つのに、なぜ大人も夢中になるのか?:グッドパッチとUXの話をしようか(2/3 ページ)
発売から約25年経つ「たまごっち」が子供だけでなく、大人からの支持を集めています。その理由を「ユーザーが行動を起こすために必要な3条件」からひも解いていきます。
なぜ、たまごっちに夢中になるのか?
「フォッグの消費者行動モデル」とは、ユーザーが行動を起こすために必要な3条件を以下の公式で表現したものです。
行動(Behavior) = 動機(Motivation)× 実行能力(Ability) × きっかけ(Trigger)
- 動機(Motivation):行為をしたい理由。高いモチベーション
- 実行能力(Ability):行為を実行する諸条件。低い行動障壁/高い実行能力
- きっかけ(Trigger):やろうと想起する瞬間。行動を促すトリガー
これら全ての要素が満たされてユーザーは初めて行動できるとされており、どの要素も欠かせません。それぞれの要素が「ハマる」ことにどう寄与しているのか、たまごっちシリーズにおける動機・実行能力・きっかけを整理してみます。
動機:自分好みに育てたい! 攻略法がやり込み要素をアップ
「まめっち」「くちぱっち」「おやじっち」など、たまごっちには、最終的な成長形態(キャラクター)が複数存在します。どのキャラクターに成長するかはランダムではなく、育て方によってある程度コントロールできます。
筆者がかつてたまごっちで遊んでいた子どもの頃、インターネットは普及しておらず、いわゆる「攻略法」が攻略本を買わない限り分からないため、手探りで育成していました。
まとめサイトやSNSなどで攻略法が簡単に分かるようになった今、何とか好みのキャラクターに育てたいという欲求から、攻略法を基にしたやり込み要素が生まれました。その結果、「次こそはまめっちに育てたい」「初めてにょろっちになったけど、意外なかわいさがあった」などといった、トライアンドエラーの要素が強まっています。
中には「亡くならない程度に放置する」という絶妙なさじ加減が求められる条件のキャラクターもいます。たまごっちは一度育成をスタートすると中断できない(電源をオフにできない)ため、死なないようにお世話をし続ける必要があるのも特徴です。この「死」の概念を存在させたことが、やり込みの粘着性をより高めるフックになっていると考えられます。
実行能力:シンプルな操作と所要時間の短さが生む中毒性
たまごっちの特徴として、お世話の機能が限定的(基本的に2択)ですぐに完了することが挙げられます。あげるのは、ごはんかおやつ。ミニゲームのあっち向いてホイは、右か左。うんちをしていたら流すボタンを押し、病気になったら注射を打つ。それぞれ数秒ずつでサクサクこなせます。
搭載されているボタンは3つで、操作がシンプルであることも特徴のひとつ。遊び方に関する丁寧な解説はなく、自分で3つのボタンを触りながら慣れていく仕組みです。
最初こそ勘違いしたり困惑したりするものの、一度学習すれば慣れるまでそう時間はかかりません。最終形態まで数日で育つため、育成に失敗しても短期間でやり直せるところも、学習を促す一因になっています。
一般的に、良いユーザーインターフェース(UI)は「中級者向け」のデザインであることがカギとされています。ユーザーが使う時間の経過とともに初級者から中級者に自然と引き上げられるような学習のしやすさを担保すること。初級者に配慮しすぎるあまり、中級者のスムーズな使用を妨げる設計にならないこと。UI設計におけるこの2つの大事な要素が、たまごっちでは実現されています。
また、シンプルな操作とお世話にかかる時間の短さが、ある種の「中毒性」につながるのも見逃せないポイントです。キャラクターは画面内で一定の動きしかしないのに、シンプルで手間がかからないがゆえに、ついつい様子を見に行ってしまう、といった行動にもつながりやすいです。
ちなみにたまごっちにはスマートフォンアプリもありますが、こちらはお世話やミニゲームなど、操作や機能のバリエーションが多く、ゲーム性が高まっています。その分、遊ぶにはまとまった時間が必要になります。携帯ゲーム型のたまごっちは操作や機能がシンプルなことで、逆に手放せなくなるという効果もある。もしかすると、忙しい現代人にぴったりの仕様ともいえるかもしれません。
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