Suica以上のメリットがあるの? 鉄道各社が「QRコード乗車」に力を入れるワケ:経済の「雑学」(1/5 ページ)
2023年12月にも東急電鉄と京王電鉄から発表があったように、ここ数年「交通系ICカード」に力を入れてきた鉄道各社が、「QRコード乗車」に力を入れている。なぜだろうか。
都市部の鉄道会社は、これまで「交通系ICカード」の普及に力を入れてきた。SuicaやPASMOの相互利用が可能になってから長く、コンビニや自動販売機などの支払いにも利用できることから、日本でのキャッシュレス化は交通系ICカードが中心になっているともいえる状況である。
近年では、「モバイルSuica」などがスマートフォンにも搭載され、その利便性から多くの人がモバイル端末と一体になった交通系IC決済を利用するようになった。鉄道各社は、このまま交通系ICカードの促進に力を入れていくと、多くの人は考えただろう。
しかし近年、クレジットカードのタッチ決済や、QRコード決済を導入する動きが鉄道各社で相次いでいる。
これらの決済方式は、交通系ICカードよりも処理速度はずっと遅い。読み込みには時間がかかる。それでも、鉄道各社が導入しようとしているのはなぜか。
タッチ決済は分かる、けど
クレジットカードのタッチ決済を交通系ICカードの代わりに使用するのは分かる。交通系ICカードのように事業者の費用負担も大きくなければ、複雑なシステムを導入する必要もない。クレジットカードの決済システムとリンクさせるだけだ。
第3セクター鉄道事業者の中には、クレジットカードのタッチ決済に力を入れているところもある。交通系ICカードシステムを導入するよりも、コストが安く済むからだ。
もちろん、交通系ICカードほどの素早い決済ができるわけではない。しかし、乗客がそれほど多くなく、無人駅ではワンマン運転の運転士が見ているだけだからさほど問題はないのである。
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