パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム過激派組織「ハマス」とイスラエルの戦闘を受け、中東情勢にあらためて注目が集まっている。シリア内戦を筆頭に以前から政情不安のイメージが強い同地域だが、昨年、カタールが中東で初めて開催したサッカーワールドカップ(W杯)以降、スポーツ業界でも急速に存在感を高めている。
中でも目立った動きを見せているのが、「アラブの盟主」を自任するサウジアラビアだ。スポーツファンなら、サウジの存在にすでに気がついている人も多いだろう。サッカーからゴルフ、F1(フォーミュラワン)、テニスなどに対する莫大な投資を繰り広げ、サウジがスポーツ業界の至るところで存在感を示しているのだ。
実は任天堂の大株主 SBGと共同ファンドのPIF
こうした投資の背景には、同国が世界に誇る政府系ファンドの公的投資基金(Public Investment Fund、以下PIF)の存在がある。PIFは2022年版の年次報告で運用資産額が2兆2300億リヤル(5944億ドル、日本円で約83兆2000億円)にも上ると公表している。世界でもトップクラスの政府系ファンドだ。
16年10月に、ソフトバンクグループ(SBG)が設立を発表した「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)のパ―トナーもこのPIF。サウジ王室には日本のコンテンツ愛好家が多く、PIFは任天堂やカプコン、ネクソン、コーエーテクモホールディングス、スクウェア・エニックス、東映などの株主でもある。特に任天堂に対しては、この1年間で保有割合を8.26%まで上げ、発言力を高めていることが、金融庁の電子開示システム「EDINET」の情報からも分かる。
PIFの会長でサウジの実権を握るムハンマド・ビン・サルマン皇太子も日本のアニメが大好きで、アニメに絡んだプロジェクトなども進行している。
そんなPIFが近年、惜しみなく金を使ってスポーツ業界に投資を行っている。というのも、サウジ政府を率いるムハンマド皇太子が「ビジョン2030」という政策を進めており、30年までに25の世界大会をサウジで開催すると目標を掲げているからだ。
要するに、カネに物を言わせてスポーツ業界に乗り込み、サウジ政府がスポーツ界を飲み込もうとしているのである。そこで現在スポーツ界で進んでいる“サウジ支配”と、その狙いについて、フォーカスしてみたい。
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