カタールのW杯開催に触発 サッカー投資を加速
まずは世界で最も人気の高いスポーツの1つであるサッカーを見ていきたい。PIFがサッカーへの投資に本格的に乗り出すきっかけになった出来事は、21年10月の英プレミアリーグの古豪「ニューカッスル・ユナイテッドFC」の買収だ。
その額は3億9100万ドル(当時のレートで約450億円)。買収後、いきなり世界で最も裕福なクラブとなった。以降、サウジはサッカーへの投資を加速させる。同クラブは英デロイトが発行している、欧州主要クラブの経営状況をまとめた「フットボールマネーリーグ2023」(FML)の収入ランキングで、20位にランクインしている。
圧倒的な資金力を背景とした積極補強の結果、昨季は4位に入り、20季ぶりに欧州最強クラブを決める「UEFAチャンピオンズリーグ」(欧州CL)への出場権を獲得した。
22年には、ライバル関係にある隣国のカタールがサッカーW杯を開催し、かなりの盛り上がりを見せた。サウジは、カタール大会の開催に触発されたらしく、同年にサッカー業界に23億ドルの投資をすると発表。そして国内の4つのチーム(アル・ナスル、アル・ヒラル、アル・アハリ、アル・イテハド)を買収し、それぞれのチームが、世界のトップリーグから少なくとも3人のスター選手を引き抜くことになった。
その象徴的な選手は、2億ドルと言われる年俸でアル・ナスルに移籍したポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド選手だ。アル・イテハドにはフランス代表のカリム・ベンゼマが移籍している。アル・ヒラルが獲得したブラジル代表のネイマールは仏リーグアン王者で、カタール資本のPSG(パリサンジェルマン)から引き抜いた。ピークを過ぎた選手が多いのは否めないが、世界的スーパースター揃いであることは間違いない。
サウジのクラブは、有名監督なども狙っており、サウジ政府は国内サッカーリーグを30年までに現在の世界58位から10本の指に入るリーグに成長させると意気込んでいる。これに加え、サウジは30年にW杯のホスト国になることが確実視されており、今後もサッカーへの投資は止まらないだろう。UEFA(欧州サッカー連盟)のアレクサンデル・チェフェリン会長は否定しているものの、欧州CLへの招待参加もうわさされており、今後も動向が注目される。
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