最後の給与が「めっちゃ減った！」 退職時に給与から固定残業代を引かれた、これって違法？（2/2 ページ）

[木村政美，ITmedia]

固定残業代制度　企業のメリット

　そもそも、企業が固定残業代を導入するメリットは主に次の理由が考えられます。

（1）給与計算の簡素化が図れる

　本来残業代の計算は実残業時間数をベースにして行うため、残業する従業員が多い企業では計算が煩雑になりがちです。固定残業代制度では残業手当分を定額にすることで、給与計算の労力軽減が期待できます。

（2）予算の概念や経営計画の安定化につなげやすい

　固定残業代制度を導入することにより、月ごとに発生する残業手当の額があらかじめ把握できるので、企業は人件費に関する予算を立てやすくなり、安定的な経営計画につながりやすくなります。

（3）新規に従業員を採用する際に、給与の条件を良く見せることができる

　企業が求人募集の際、固定残業代を給与支給額に含めて提示することで、給与額を高く見せることができるため、採用時有利に働く場合があります。

（4）従業員側にもあるメリット

　一定時間の残業がある企業が固定残業代制度を導入することで、従業員にとっては毎月の収入の予測がしやすいため、自身の生活設計が立てやすくなります。

固定残業代制度を導入する場合の注意点

　固定残業代制度では、実際の残業時間ではなく、あらかじめ設定した残業時間に基づいて残業手当を支給するため、現実の業務状況に合わせて適切な基準を設定する必要があります。

　実際の残業時間に応じて計算した残業代が固定残業代の額より少ない場合でも固定残業代の減額は認められず、固定残業代の額より超えた場合は、その超過額を支払う必要があります。固定残業代制度は、企業の残業代を減らすためにあるのではないことに留意しましょう。

木村政美

1963年生まれ。旅行会社、話し方セミナー運営会社、大手生命保険会社の営業職を経て2004年社会保険労務士・行政書士・FP事務所を開業。労務管理に関する企業相談、セミナー講師、執筆を多数行う。2011年より千葉産業保健総合支援センターメンタルヘルス対策促進員、2020年より厚生労働省働き方改革推進支援センター派遣専門家受嘱。

現代ビジネス、ダイヤモンド・オンライン、オトナンサーなどで執筆中。