SFAが「レポートツール」になり下がる 使いこなせない営業組織が持っていない視点(3/3 ページ)
日本企業の営業組織でも「セールステック導入」が一般的になってきた。しかし使いこなせていない組織が多いようだ。SFAを導入したのにただのレポートツールに成り下がっている話も聞く。セールステックを効果的に活用するためにはどうすればいいのか、解説する。
米国で用いられる最新のセールステックたち
米国の企業は、SFAの後にセールスイネーブルメント、バイヤーイネーブルメント、デジタルセールスルーム、セールスエンゲージメントなどの最新のセールステックを導入している。顧客の状態だけでなく、提案内容の奥深くまでデジタルツールで管理する。そのため、営業担当や顧客の購買担当の動き方が変わり、取引の成約率が上がる。
営業活動とは営業と顧客の双方の合意があってして成り立つため、コミュニケーションの質や頻度が変わらないと効果は出ない。SFAをただ眺めても何も起きないので、コミュニケーション内容を改善するところまでセールステックが入り込むのだ。
簡単な紹介をすると、セールスイネーブルメントは提案力向上のための情報インプットツールだ。資料やノウハウなどをデジタル環境に整理し、誰でもアクセスできるようにする。トップ営業などのナレッジや営業スタイルが組織内で形式知化されることで、各営業のスキルを向上させ、営業提案を変えていく。
バイヤーイネーブルメントは、顧客自身が社内で提案を通すのをサポートするツールだ。例えば、営業用の提案サイトを構築し顧客に渡すことで、社内説明のロジックを強固にできる。
デジタルセールスルームは提案内容のデジタル管理ツールだ。営業担当と顧客担当とが共通の環境で案件の進捗を管理できるようにし、共に議論を重ねていくことで合意形成を図れる。
セールスエンゲージメントは営業のタスク自動化ツールで、営業業務であるメール送付などのコミュニケーションを代替する。
これらのツールは営業と顧客のコミュニケーションに深く介在し、合意形成のための段取りやシナリオを支えている。営業担当と顧客担当、それぞれの動きが変わらないと営業活動の生産性は上がらない。具体的な情報のやり取りやタスクなどが変わるところまで徹底しなければ、セールステックは業績に寄与しない。
日本企業のセールステック投資は足りなさすぎる
日本の大手企業のSFA導入率はほぼ9割以上に上っている。しかし、これに満足せず、次なるセールステックを導入することを提唱したい。そもそも米国企業は日本企業の10倍近くの数のSaaSを自社に導入している。金額ベースだと30〜40倍にもなる。
米国企業では営業現場において複数のセールステックを併用して使うのは当たり前である一方、日本企業は効果が出るまで全然やりきれていないというのが実態だ。セールステック活用が進んでいる米国水準に追いつくためには、自社の営業課題に合わせて第二、第三のセールステックツールを入れるべきだ。
セールステックをただのレポートツールと捉えるのはもったいないし、中置半端な投資で効果が出ないと断言するにはあまりに早い。
筆者プロフィール:藤島 誓也 株式openpage代表
ビズリーチにてカスタマーサクセス(CS)チームを立ち上げ後、2018年にopenpageを設立。
CSをデジタル化する「openpage」の製品提供をはじめ、CSの体制づくりのコンサルテーション、SNSでの情報発信、大型オンラインイベントの企画など、米国流のCSを国内で広く啓蒙。openpageではB2B取引の透明性(オープン性)に着目し、「セルフサーブで顧客が考えられる」デジタルセールスの体制構築を支援。営業トーク、製品機能、価格などすべてデジタルの文字情報として起こし、顧客に情報共有可能にしている。
著書に「実践カスタマーサクセスBtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー」(日経BP、2023年)
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