プロは「上手なウソ」をつく 関根勤や小堺一機を世に出した、大御所マネジャーの仕事術:異才を見いだす「育てるマネジメント」(2/4 ページ)
「上手な嘘をつけるのが良いマネジャーだ」――ENPASSの川岸咨鴻(かわぎし・ことひろ)名誉会長は、芸能マネジャーとして浅井企画で関根勤、小堺一機、柳沢慎吾、竹中直人、飯尾和樹といった人気タレントを続々と見出し、世に送り出してきた。本記事では川岸氏が身をもって体感した「良いマネジャーとは何か」「仕事はどう進めるべきか」について聞き、そのマネジメント論の本質に迫る。
「上手な嘘をつけるのが良いマネジャーだ」
佐藤氏: 川岸さんが関わったタレントさんたちが、どんどん成長していく理由が分かる気がします。具体的には、どんなマネジメントを行っていたのですか。
川岸氏: ホリプロの社長の堀さんがね、「会社は複数の柱がないと安定しない」と言っていたんですよ。それを聞いて、浅井企画もコント55号だけじゃだめだなと思って。
ちょうどその頃、バラエティ番組『ぎんざNOW!』のコーナー『しろうとコメディアン道場』で、浅井社長が審査員をしていて。そこから新人タレントの発掘に力を入れ始めました。関根勤や小堺一機、柳沢慎吾、竹中直人なんかはそこ出身です。
佐藤氏: 今はYouTubeやTikTokでバズった人たちがメディアに出てくる時代ですけど、当時はテレビの素人コーナーで発掘していたんですね。
川岸氏: そうですね。素人コーナーで面白い人を見つけて、話をしにいく。その頃の芸人は、まだ役者や歌手に比べて地位が低かったんですよ。僕はもともと音楽系のマネジャー出身だったから、衣装やステージ、ギャラなども歌手と同じように育ててました。
佐藤氏: そのやり方なら、自然と士気が上がりそうですよね。他にも、タレントさんたちのモチベーションをあげるために意識していたことはありますか?
川岸氏: なんだろうなぁ……。ちょっと違うかもしれないけど、欽ちゃんは「上手な嘘をつけるのが良いマネジャーだ」って言ってましたね。
例えば、タレントから今後のスケジュールについて聞かれたけど、全然埋まっていないとき、すぐに「予定はありません」と伝えるのはダメ。全く予定がないと分かっていても、手帳を確認するフリをして「まだ埋まっていないけど、今頑張っているから!」と嘘をつけるのが良いマネジャーだって。
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