2024年春ダイヤ改正、どうなる首都圏の通勤事情:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
3月16日、2024年のJRダイヤ改正が行われる。最大のトピックは北陸新幹線の金沢〜敦賀間延伸開業だ。運賃制度にも変更がある。今回はJR東日本のダイヤ改正を中心に、首都圏の通勤通学環境の変化を見ていこう。
成田エクスプレスと通勤特急の拡充
確実に座って通勤・退勤できる「通勤ライナー」はすっかり定着した感がある。もともとは大手私鉄の観光特急で早朝夜間に通勤者の利用があり、それをヒントに国鉄(現JR)が車庫へ回送する特急車両を通勤客向けに営業した。それをさらに大手私鉄が模倣して、通勤時間帯の特急を増やし、特急のない路線に座席指定できる車両を導入した。この傾向はまだ続きそうだ。
成田空港利用者向けの特急「成田エクスプレス」の通勤利用拡大策も注目だ。成田エクスプレスの料金は空港連絡路線の整備費回収や、空港を使わずに利用する乗客を退ける意味合いもあって、ほかの特急列車より割高な「A特急料金」に設定されていた。しかしコロナ禍で海外旅行需要が激減し「成田エクスプレス」も大幅な減便。せめて通勤利用に使ってもらおうとキャンペーンを実施した経緯がある。
24年のダイヤ改正から「成田エクスプレス」で「成田空港駅」「空港第2ビル」を利用しない場合に限り、割安なB特急料金となる。例えば大船〜東京間は50キロメートル未満だから、成田エクスプレスの特急料金は1290円だった。今後は「踊り子」「しおさい」と同じで760円になる。ただし、きっぷを持たずに乗った場合の車内精算は1020円。オンライン予約サービス「えきねっと」で購入すると660円だ。
大船発の成田エクスプレスが6時台の15分おき3本から6〜7時台の30分おき3本に整理される。通勤利用の偏りを避ける狙いがある。5時台と8時台以降の1時間1本は変わらず。また、八王子発の成田エクスプレスは新宿発に変更となった。これは19年から運行開始した通勤特急「はちおうじ」があり、特急料金の格差から「はちおうじ」に人気が集中した影響だろう。ちなみに「はちおうじ2号」の八王子駅発時刻は12分繰り下がり6時28分発となる。これは現在の「成田エクスプレス7号」のダイヤとほぼ同じだ。
東海道線の通勤特急「湘南」は上り10本が設定されている。このうち湘南14号は小田原発から平塚発に短縮、湘南2号は東京着が2分繰り上がり、湘南6号は発車が6分遅くなるけれども、到着は4分早くなる。
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