社員がリスキリングしてくれない IBM、キリン……成功企業はどうしているのか(1/2 ページ)
リスキリング教材を用意したのに、社員が活用してくれない。そんな悩みを抱える企業が多いようだ。社員が積極的にリスキリングに取り組み、効果を上げるためにはどんな工夫が必要なのだろうか――?
リスキリング教材を用意したのに、社員が一向に活用してくれない――。
次世代の働き方に対応すべく新しいスキルを習得するリスキリング。多くの企業が取り組みを進める一方で、うまく進まず手応えを感じられずにいる企業も多いようだ。
社員が積極的にリスキリングに取り組み、効果を上げるためにはどんな工夫が必要なのか。転職サービス「doda」副編集長の桜井貴史氏と、パーソル総合研究所上席主任研究員の小林祐児氏の講演をもとに、解決策や好事例を紹介する。
IBMやLIFULLの好事例 「うまくいく企業」の共通点は?
パーソル総合研究所は、2023年12月発刊の同社機関誌「HITO」vol.21にて、「人事トレンドワード 2023-2024」を発表した。
この中で、23〜24年に人事領域において注目されるトレンドワードとして「賃上げ」「リスキリング」「人材獲得競争の再激化」の3つが選ばれた。
中でも特に注目したいのがリスキリングだ。同社の調査によると、ソーシャルメディアなどにおける23年10月までの各トレンドワードへの言及数は、22年同期比で賃上げが180%、リスキリングが1049%、人材獲得競争関連が168%と、リスキリングへの注目度が著しく高まっていることがうかがえる。
リスキリングについては、22年に政府が個人のリスキリング支援に5年間で1兆円を投じる方針を発表したことで急激に注目が高まった。それを受け、23年には各省が相次いでリスキリングに関する補助金の増加や制度を導入。中でも厚生労働省はデジタル分野へのリスキリングを強化するため、23年4月時点で179講座のデジタル関係講座数を25年度末までに300講座以上に拡大すると発表した。
企業でもリスキリングへの取り組みが盛んだ。パーソルキャリアが企業向けに実施した調査によると、全体の5割以上、従業員数が1000人以上の企業の7割以上がリスキリングを「導入・検討している」と回答した。
では、リスキリングの先進企業は一体、どんな取り組みを進めているのか。
桜井氏は、企業のリスキリング支援事例として、IBMの「Your Learning」とLIFULLの「LIFULL大学」を取り上げる。
IBMでは「1年間に40時間以上は自らのスキル向上に時間を割く」という企業カルチャーが根付いており、独自のeラーニングプラットフォーム「Your Learning」で個人の学習時間や項目を可視化している。スキルや学習履歴をもとに学習プログラムを推奨する他、勉強会や研修といったその他の学びのツールも充実させているという。
LIFULLは社内大学制度「LIFULL大学」を09年に開校。「営業学部」や「ものづくり学部」など年間50〜60講座ほどを開講し、のべ約500人が参加。多くのプログラムは社員が講師を務め、勤務時間内で準備を行うことが可能だ。
桜井氏は、両社の特徴として「リスキリングの取り組みを採用サイトなどで社外にもアピールしており、採用力の強化にもつなげている」点を挙げた。
dodaの調査では、20〜30代の会社員男女の86%がリスキリングに「興味・関心がある」と回答。さらに8割超がリスキリング制度が充実している企業ほど「志望度合いが上がる」としており、企業のリスキリング施策は、人材育成だけでなく人材獲得の面でも重要な要素となりそうだ。
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