「真冬の5合目に電車で行ける」 富士登山鉄道に賛否両論:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/7 ページ)
2013年に世界文化遺産に登録された富士山。登録時に指摘された課題の解決策のひとつとして、山梨県はLRT方式による「富士登山鉄道構想」を推進している。対して富士吉田市は電気バスを推している。それぞれのメリット・デメリット、そして観光地として、世界遺産としての富士山について考えてみたい。
富士山に登山鉄道を建設しようという動きは明治時代からあった。しかし、霊峰富士を汚してはいけない、という信仰心と自然破壊の懸念から実現に至らなかった。富士スバルラインは1964年に開通した。東京オリンピックに連動した観光投資ブームとマイカーの普及、自然保護の妥協点が「富士山5合目終点」といえそうだ。
その後、富士山に限らず、マイカーやバスの排気ガスや渋滞が問題となった。観光道路も自然保護にふさわしくないという認識が広まった。そこで富士スバルラインを環境に優しい「路面電車軌道(LRT)」に転換する。これが山梨県知事の公約でもあった。
山梨県は23年11月21日に山中湖村で住民説明会を実施している。23日には富士吉田市で開催され、賛成派・反対派合わせて780人が詰めかけた。24年も1月17日に忍野村、1月22日に河口湖町、1月24日に鳴沢村で開催している。担当窓口に問い合わせたところ、県民以外でも入場できるとのこと。そこで17日の忍野村の説明会に行ってみた。開始は午後7時から。
せっかくだからスバルラインにも行ってみた。出発時は積雪のため1合目までしか行けないとのことだったけれども、現地に着いたら4合目まで開通していた。「富士山へ向かっていくドライブは楽しい。曲がりくねった山道も運転好きなら楽しくてたまらない」といったドライバーも多いのではないだろうか。ちなみに、筆者は道ライターを名乗りつつ、ドライブも好きだ。コロナ禍に富士スピードウェイで国内A級ライセンスを取得している。
「下山」したあと、午後7時まで水族館や忍野八海を見物して過ごした。
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