平均月給31万円、過去最高だけど……「賃上げラッシュ」に潜む3つの課題:働き方の見取り図(4/4 ページ)
フルタイムで働く人の2023年の平均月給は、過去最高の31万8300円――この数字に納得感を持てた人は果たしてどれくらいいるだろうか。賃上げの機運が高まりつつある一歩、その内実は本当に喜べるものなのか。
賃上げ以外にすべきこと
一方で、賃上げ以外にも社員の収入を増やす方法があります。副業です。
物価高を上回る賃上げとなると、多くの会社にとって高いハードルになります。それでも少しずつ賃上げを続けて物価高が収束に向かえば、実質賃金は上向くかもしれませんが、中にはコンスタントな賃上げが難しい会社もあるでしょう。しかし、副業を推奨すれば賃上げいかんにかかわらず、社員は自力で副業の収入を上乗せできるようになります。
ただ、長時間労働が慢性化し、有休が取得しづらいような職場環境だと社員はゆとりを持てず副業どころではありません。副業を推奨するには、副業しやすい職場環境の整備が不可欠です。
賃上げは物価高や人手不足など、多くの会社が抱える問題を解決するための最優先課題に違いありません。しかし、物価高を超える水準で他社との競争で優位に立てるような賃上げができる会社など一握りです。それ以外の会社が物価高や一握りの強者との競争に立ち向かうためには、賃金以外の条件を含めた全方位的な対応策に取り組む必要があります。
日本で大胆な賃上げがしづらい背景には、いまも終身雇用の呪縛が少なからず影響を及ぼしているという構造的な問題もあります。会社は賃上げする際、やがて社員の能力が自社のニーズに合わなくなったとしても、定年まで賃金を払い続けることを想定しなければなりません。
それでは、思い切って物価高を超える賃上げをしたいと思っても躊躇(ちゅうちょ)してしまいます。構造的な賃上げを標榜している政府は、経済界に賃上げを要請するばかりでなく、解雇ルールを整備して会社が終身雇用制度に縛られないようにするなど、法制度の再構築を進める必要があるのではないでしょうか。
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