300円ショップ好調の裏で 「100円死守」なセリアが苦しいワケ:小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)
物価高を背景に、ディスカウント型のスーパーを利用する消費者が増えている。多くの消費者がより安いものを求める中、100円ショップ業界ではある意外なことが起きている。
「100円死守」で勝負に出たセリア
100円ショップはご存じの通り、単価が100円であるにも関わらず、100円とは思えないコスパの高い商品群を多彩に取りそろえている店として浸透。市場規模は1兆円超といわれるほどに成長した業界である。しかし、海外生産を前提としてコスパを実現しているため、中国などアジアにおける人件費上昇、原材料高騰、円安などによって、原価率が上昇。100円という価格の維持が懸念される状況にある。
ただ、業界では「原価上昇はアジアの経済成長に伴って、構造的に不可避なものである」と10年以上も前から認識されていた。そのため、ほとんどの企業が少し前から200円、300円といった価格帯の商品を、徐々に混ぜ込むという動きがあった。今回の値上げラッシュも、価格維持に向けた企業努力と併せて、価格帯の多様化によって乗り切るという方向だった。
しかし、業界2位の大手セリアは、100円均一を死守することを宣言し、勝負に出た。ところが、セリアの「100円死守」は、期待したほど成果が出ていないのである。
図表3−1は、上場している100均、300均大手の業績である。セリアは売り上げで2%の増収となっているが、3COINSの+25%には遠く及ばず、キャンドゥの+8%にも負けている。既存店売上高の推移をみても、セリアは良好とは言い難い。店舗数を増やしてたものの、売り上げが伸び悩んだようにも見える。
収益に関しては各社ともにコスト高騰の影響は避けられず、横ばいのワッツ以外はみな減益となっている。中でもコロナ前は10%弱あったセリアの営業利益率は、会社通期予想で今期は6%弱へと下降するとしており、100円死守の戦略は収益面でもかなり負担となっていることが分かる。一方で際立つのは、100円ショップ各社より、300円ショップの3COINSが絶好調であるということだ(図表3−1〜3−3)。
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