「廃墟モール」米で急増なぜ? バック・トゥ・ザ・フューチャーゆかりの地も(1/2 ページ)
この冬、あるショッピングモールの惨状を伝えるニュースに米国中が騒然となりました。そのモールとは、日本の皆さんもよく知る映画の舞台になった場所です。一体、どうなっていたのでしょうか。
小売店が大規模なセールを実施する「ブラックフライデー」。11月の第4金曜日(感謝祭)の翌日からセールを実施する米国の文化ですが、昨今は日本でもECサイトや店舗が実施する機会が増え、広く知られるようになりました。
実は本場の米国では、ブラックフライデーよりも「スーパーサタデー」(Super Saturday)が繁忙期だったりします。スーパーサタデーとは、クリスマス前の最後の土曜日を指し、2023年は12月23日でした。
クリスマスのプレゼント購入を先延ばししていた買い物客がお店やショッピングセンターに押しかけて大変な賑わいを見せる日となります。
コロナで鬱積した需要で押し上げた22年からは鈍化するものの、23年のスーパーサタデーの客数もまずまず、といったところでした。全米小売業協会(NRF)の調査によると、23年のスーパーサタデーの客数は1億4190万人に上るとの見通し。
ショッピングモールなど、リアル店舗で買い物する客数は5300万人となり、前年の4400万人から増加するとの予測でした。スーパーサタデーにリアルとオンラインの両方で買い物する客数は5800万人と見込んでおり、オンラインのみは3100万人の予想です。
この予測を見る限り、リアル店舗の客数も堅調のように見えますが、この冬、あるショッピングモールの惨状に、米国中が騒然となりました。そのモールとは、日本人もよく知る有名映画の舞台になった場所です。一体、どうなっていたのでしょうか。
著者プロフィール:後藤文俊(ごとう・ふみとし)
流通コンサルタント。
35年近い在米生活に基づき、米国の流通業に視察に訪れる経営者や企業を支援している。
公式Webサイト「激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ」では日々、米国小売業の最新情報を発信している。
底堅い成長を続ける米国経済だが……
NRFは23年11月、同年の年末商戦期間(11〜12月期)の小売売上高(自動車やガソリン、レストランの売上を除く)が前年同期比で3〜4%増となる9573億〜9666億ドルになるとの見通しを発表していました。
しつこいインフレに金利の上昇など経済に逆風が吹く中、小売業にとって最大の繁忙期に成長が鈍化するとの予測でした。22年の実績は9363億ドルの売上で前年からの伸長率は5.3%。また21年は12.7%の二桁増加を記録し、20年もコロナ前となる19年に比べて9.1%の増加だったのです。
予想としていた3〜4%の成長は10〜19年の平均3.6%成長とほぼ同じ。米国経済はリセッション(景気後退)の懸念があるにもかかわらず底堅い成長を遂げています。
増え続けるクレジットカード負債
しかし、直近では高止まりするインフレに金利上昇、さらに学生ローンの返済再開が家計を圧迫している実態があります。これらの要因によりクレジットカードの支払い遅延の問題も大きくなっています。クレジットカード負債が記録的に増え続けている実態があります。
例えば、米国の老舗百貨店メイシーズでは、クレジットカードで支払う客やその額が減少し、直近の売上高に大きなマイナス影響が出ています。クレジットカードの決済遅延が想定よりも増加したとしている理由は、金利高。金利高によりクレジットカードの支払い残高が膨れ上がっているのです。シティバンクと提携するメイシーズのクレカの年金利は32%。コールズやノードストロームといった他の百貨店も、クレカの支払い残高の肥大の影響が売り上げを圧迫しています。特に年収7万5000ドル以下の世帯が厳しくなっているのです。
スーパーサタデーにクレジットカードを使って買い物をすることは、借金がさらに膨れることを意味します。
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