マック、KFCより人気 「日曜は働かない」米最強ファストフード店のビジネスとは?(1/3 ページ)
米国には、日本で人気のKFCやマックが太刀打ちできないほど人気の最強ファストフード店があるという。日曜日は定休。それでも顧客満足度は全米1位。いったい、どんな企業なのか――。
プロ野球、阪神タイガースが38年ぶりに日本一となったことで、今年のクリスマスはこれまで以上にKFC(ケンタッキー・フライドチキン)が売れるかもしれません。「カーネル・サンダースの呪い」が解けたことに感謝し、阪神ファンが「おおきに!」と食べまくる可能性があるからです。
「カーネル・サンダースの呪い」とは1985年、阪神のリーグ優勝が決まった際に、歓喜したファンたちがKFC道頓堀店に飾ってあったサンダース人形を胴上げした後に道頓堀川に投げ落としたもの。この翌年から阪神は17年連続でリーグ優勝を逃し「サンダースの呪いではないか」と野球ファンの間でささやかれていました。サンダース像は行方不明となって四半世紀近く経った2009年に発見されています。
カーネル・サンダースは米国生まれですが、本国では逆に優勝や全米一などとは程遠い存在となっています。世界に2万5000店を展開するKFCはなんと、生まれ故郷の米国では日本ほど人気がありません。実は米国には、KFCやマクドナルドでさえ打ち負かすことができない、極めて強力なライバルがいるからです。
ファストフードチェーンであるにもかかわらず、日曜日は定休。それでも顧客満足度は全米1位。いったい、どんな企業なのでしょうか?
著者プロフィール:後藤文俊(ごとう・ふみとし)
流通コンサルタント。
35年近い在米生活に基づき、米国の流通業に視察に訪れる経営者や企業を支援している。
公式Webサイト「激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ」では日々、米国小売業の最新情報を発信している。
「日曜は働かない」創業者の思い
KFCやマクドナルドの協力なライバルとは、1946年創業のチキン・サンドウィッチ・チェーンのChick-fil-A(チックフィレ)。日本未上陸のため、知らない人も多いかもしれません。
同社は11月9日、米テキサス州ダラス近郊レッドバード地区に3000店舗目をオープンしました。全米47州に3000店を展開するチックフィレは、50州に4349店(23年9月時点)を展開するKFCとは、さまざまな点で異なっています。
最も顕著な違いは、先述の通り、日曜日が定休日であるということです。創業者のトルエット・キャシー氏が敬虔(けいけん)なクリスチャンであったことで1号店から毎週日曜日を休みにしているのです。日曜日は教会に行くか、もしくは家族とゆっくり休んでもらいたいというのが創業者の考えなのです。
しっかり休みを取れる従業員は、その他の営業日で日曜日の分までよく働くことになります。よく働く、つまりハードワークは一生懸命に働くという独りよがりな意味ではなく、顧客満足度を最大化するために働くということです。実際、チックフィレは今夏に発表された米国顧客満足度指数(ACSI:American Customer Satisfaction Index)のファストフード部門で1位となりました。
しかも顧客満足度トップを9年連続で維持しているのです。チックフィレのポイントは85、対するKFCは81ポイントで4ポイントの差となっています。
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