サムスンも誘致 横浜市にはなぜスタートアップが多く集まるのか(2/3 ページ)
横浜市のスタートアップ誘致戦略とは何か。武器は「先進性」と「身近さ」だという。スタートアップ・イノベーション推進室室長に聞いた。
サムスンの新拠点も 企業から見た横浜市の魅力
横浜市をビジネス的な側面から見たとき、土地が持つ強みや、企業側が魅力に感じているポイントはどこにあるのだろうか。
「都会的でありながら自然が近いところ。水や緑を感じながら働くことができるのは横浜市の魅力だ。加えて、都市の中に多様な施設が非常にコンパクトにまとまっているという点も挙げられる。スポーツや芸術に触れられるため、創造性を刺激するような場所がすぐそこにあるのはイノベーション都市として非常に大きな特徴」だと手塚氏は話す。また「スタートアップに特化していえば、横浜市は企業と自治体や支援機関との距離感が非常に近いので、一社に対して手厚くサポートできる環境もある」と加えた。
市内のみなとみらい21地区には国内外有数の大企業の本社やR&Dの拠点がある。モビリティ、IT、研究開発、サイエンス、ものづくりを中心に、グローバル企業の研究開発拠点が集積してきた。こうした有数の企業や団体が集まっていることに加え、発展した都市でもあるがゆえに、実証実験を行うには非常に適した場所だといえる。こうした場所に魅力を感じたのか、23年12月、半導体の世界的メーカーであるサムスンも、最先端研究拠点をみなとみらい21地区に新設することを発表した。
「東アジアなら日本のYOKOHAMA」を目指して
こうした土壌があることを国内外のスタートアップや有力なインキュベーターに伝え、横浜市内でオープンイノベーションを推進させていくことが活動の肝だ。特に地域住民の生活の利便性向上につながるモビリティ・子育ての領域を重要分野として位置付け、集中的に支援していくという。
モビリティやGX(Green Transformation)領域は、アメリカの都市では力を入れているが、東アジアとなると想起される都市は少ない。ゆえに「グローバルな視点で見たときに『東アジアなら日本の横浜』と、海外の投資家やスタートアップが目指してくれるような環境であることをアピールしたい」と手塚氏。言葉通り、23年はモビリティ領域を中心に海外との接点を積極的につくった。
例えば、23年6月にキックオフした「Mobility Innovation Hub YOKOHAMA」が挙げられる。国内外のモビリティスタートアップが集う機会としてつくられたコミュニティー企画であり、海外の最新情報の共有や海外テック企業との交流などが継続的に行われている。
この取り組みの一環で、ドイツのベルリンでモビリティ特化型エコシステムを運営するThe Driveryに、山中竹春横浜市長が訪問した。欧州のスタートアップが横浜を拠点として、日本に進出するきっかけをつくりたいという狙いだ。現地を訪問した際に、横浜市の強みでもあるものづくり技術の高さや、実証実験の場として有益な検証ができることを伝えることができ、手応えを感じたという。こうした取り組みは、国内のモビリティスタートアップが欧州に進出するきっかけにもなる。まさに横浜市が“Hub”となる取り組みだ。
また23年11月にはGX分野を中心とした国際コンベンション「Y-SHIP2023」を開催。期間中は海外のモビリティスタートアップ6社を招聘(しょうへい)し、国内企業とのビジネスマッチングが生まれる機会もつくった。38件の商談が生まれ、国内での実証実験に向けた協議が始まるなど、次につながる成果を得た。
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