実現すれば世界初? 特急車両に水素エンジンを載せる? JR東海と組んだベンチャーに聞く:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/9 ページ)
JR東海が2023年12月、鉄道車両向け燃料電池の模擬走行試験を公開した。鉄道の脱炭素の多くが燃料電池方式で、水素エンジンは鉄道業界では初耳。JR東海は、この水素エンジンをi Laboと開発するという。i Laboとはどんな会社か、さらに水素エンジンの仕組みと可能性などを取材した。
JR東海は脱炭素社会への取り組みとして、非電化区間の水素エネルギー化を推進する。第一目標は特急形ハイブリッド車両「HC85系」の水素エネルギー化だ。その手段として「燃料電池」と「水素エンジン」を検討している。
HC85系はディーゼルエンジンで発電してモーターを回転させる。バッテリーも搭載して、減速時に台車側のモーターで発電し、バッテリーに貯める。このバッテリーの電力も加速時に使うから、発電機とバッテリーのハイブリッド方式となる。見かけはディーゼルカーだけれど、実態は「発電機を積んだ電車」だ。このディーゼル発電機を燃料電池に置き換えるか、水素エンジン発電機に変換する。
JR東海は、2023年12月18日に燃料電池による模擬走行試験を公開し、その模様は本連載でも紹介した。しかし水素エンジンはエンジン単体の展示だけだった。水素エンジン開発についてJR東海は「i Labo(東京都中央区)と開発していきます」と発表している。
鉄道の脱炭素は世界中で開発が進められている。しかしほとんどが燃料電池方式だ。水素を直接燃料としてエンジンを回す方式は、少なくとも鉄道業界では初耳だ。実現すれば世界初の「水素エンジン鉄道車両実用化」になるかもしれない。
それにしても、i Laboという会社名が突然現れた。水素エネルギー分野では有名かもしれないが、鉄道業界では初耳という方も多いだろう。i Laboとはどんな会社なのか。同社で執行役員(営業本部長)を務める小松久宣氏に話を聞いた。また、水素とは何か、水素エンジンとは何か、その仕組みと可能性についても取材した。
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