「トヨタグループ」連続不正への提案 なぜアンドンを引けなかったのか:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/8 ページ)
2022年の日野自動車を皮切りに、4月のダイハツ工業、明くる1月の豊田自動織機と、トヨタグループ内で不祥事が続いた。立て続けに起こった不正はなぜ起こったか。そして、その原因を考えていくと、トヨタにはこの問題を解決できる素晴らしいソリューションがあるではないか。
トヨタにない異文化を持つダイハツ
記者会見の質疑応答で何度か出た話でもあるが、「トヨタでは不正のない認証ができているというならば、そのやり方できっちり管理してダイハツを監督すればよかったではないか」という意見は少なくない。しかし、同じ自動車メーカーといっても、仕事のやり方は各社で違う。意外に忘れられているが、そこが同じではないからこそ、多様なメーカーの多様な製品が世に出てくるのだ。
クルマの設計思想も、手順も、使う技術も、認証のやり方も、全部トヨタのやり方で強制的に統一したら、その時、ダイハツの存在意義は何なのだろうか? そうやってできたクルマにダイハツのエンブレムを付けたところで、それはトヨタ車ではないのか。
トヨタには金があるし人もいる。別にトヨタの手の内にあるやり方だけでいいのであれば、トヨタブランドで軽自動車やコンパクトカーを作ればいいだけで、何も異質の文化を持ち込んでくる違う血の会社、ダイハツをアライアンスに組み込むまでもない。人類の歴史を見ても、異なる文化は必ず摩擦を起こすから、そもそも面倒事の種を含むものだ。わざわざそんなリスクを取る必要はない。
しかし、実態としてトヨタはそう考えていない。トヨタのエンジニアは「ダイハツの技術をリスペクトしている」という。安価なコンパクトカー作りにおいて、トヨタはダイハツにかなわない。それは以前、経営階層の技術者からはっきりと聞いた話である。
そしてそういうリスペクトがあるからこそ、トヨタは自社にない異文化を持つダイハツを選んで、100%子会社にしたのである。
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