ゲームのローカライズ対応 「おせっかい」とは言い切れない、これだけの理由:エンタメ×ビジネスを科学する(2/2 ページ)
「余計なお世話」「過剰反応」とファンの望まない形になるケースもしばしば存在する、ゲームのローカライズ。今後、業界はどうなるだろうか。
時代とともに変化する、ローカライズの社会的要請
ゲームにおけるローカライズは価値観の変化や技術の進歩により、対応を求められる領域が広がっている。
例えばアクセシビリティである。身体的な制約を持つプレーヤーにも配慮した設計が求められ、字幕の大きさや使われる色の調整、両手が使えないプレーヤー向けの操作性カスタマイズ、音声読み上げ機能など、アクセシビリティを考慮した対応が必要になってきている。
背景には米国のCVAA法律がある。これはコミュニケーションに関わるハード・ソフトは障がいを持つ人でも使用可能なものとすることを定めた法である。2018年まではゲームへの適用を猶予されていたが、19年以降はこの法に対応したものである必要がある。ゲームビジネスにおいて米国市場は大きな影響を持つため、グローバル展開を目指すゲームを開発する際は、必然的にこのアクセシビリティ対応が必要だ。
オンラインプラットフォームを通じたデジタル配信が主流となり、全世界同時リリース/バージョンアップが前提となったことも、ローカライズにおける変化といえる。かつては日本語版を最初に発売し、ローカライズを行った米国版・インターナショナル版と同じタイトルの異なるバージョンを順に投入するケースも多く見られた。ただ世界同時配信が主流になった昨今、ローカライズはより迅速に、また効率的に行われる必要が生じている。
エンターテイメントのローカライズで定期的に話題となるのが文化・風習に関連した表現方法の対応であり、特にポリティカルコレクトネスへの対応についてメーカー側には難しい調整が求められており、ゲームも同様である。なおSNSなどで話題になり、より多くの人の目に触れ、その結果大きな論争を呼ぶこともある。
事例としてはキャラクターの名前や服装、キャラクターが持つ小物など、法的には定められていないものの文化・思想的に避けたほうがよい表現の修正など、先に例示したように昔から存在している(後編に続く)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ゲームの海外展開で「文化や思想」どこまで配慮すべき? 法的にOKでも……
時にはファンから「余計なお世話」と迷惑がられてしまう、ゲームにおけるローカライズ。ゲーム開発会社はどう向き合うべきか。後編。
模倣品か、世紀の傑作か――「パルワールド」が熱狂を生むワケ
爆発的人気と議論の渦中にあるゲーム「パルワールド」。そもそもどんなゲームであり、なぜここまで話題になっているのか。
『原神』爆発的ヒットの要因は、「無課金勢」を見捨てない設計にある
スマホゲームに触れたことがあれば、まず知らない人はいないであろう中国発のゲーム『原神』。ここまで巨大なゲームコンテンツとなった要因を分析する。後編。
MAPPA単独『呪術廻戦』大成功の一方で……「製作委員会方式」は本当に悪なのか?
『呪術廻戦』が人気だ。同アニメの制作会社のMAPPA(東京都杉並区)が実行した「単独出資方式」に脚光が当たっている。これまで主流だった「製作委員会方式」とはどう違うのか? それぞれのメリット・デメリットは。
「アーマード・コア」10年ぶり新作が爆売れ “マニア向け”ゲームだったのに、なぜ?
フロムソフトウェアの「アーマード・コア」新作が好調だ。発売前からSNSで大いに話題となり、発売後初動の盛り上がりもすさまじい。なぜ、ここまでの盛り上がりを見せているのか。