幹部候補生を「3年間で倍増」させる 岡山の老舗SIerの挑戦:勝ち続けるためのリスキリング(1/2 ページ)
幹部候補生を、今後3年間で50人→100人に増やすという。その取り組みとは。
企業が社員に新たなスキル・技術を習得させる「リスキリング(学び直し)」の存在感が高まっている。岡山県に本社を構える設立1969年の老舗SIer、両備システムズ(岡山市)はリスキリングに注力する会社の一つだ。
同社は中期経営計画の中で、将来のグループ長・カンパニー長となる「幹部候補生」を2026年までの今後3年間で50人から100人に倍増させる計画を掲げている。この目標を達成するべく、30〜35歳の社員を選抜し、9カ月間に及ぶプロジェクトを実施している。
「プロジェクトでは、『事業部の責任者』になったつもりで事業計画を作ってもらいます」。人財戦略部部長の三宅生子氏はこう説明する。同社では次世代の幹部をどう育成する計画なのか。また、同時に進めているという全社員のスキルを底上げする取り組みとはどのようなものか。
「次世代幹部候補」を徹底的に育成 9カ月かけたプロジェクト
「次世代育成プロジェクト」と銘打った取り組みは、次期グループ長・カンパニー幹部候補として将来を担う人材を育成する目的で、2021年から行っている。幹部に必要な幅広い知見の習得やヒューマンスキルなどを強化し、各事業部における新たな商品戦略、開発戦略、販売戦略などを立案できる力をもった人材を育成するのが狙いだ。
この取り組みでは実際に事業計画を作成するシミュレーションを行わせ、組織運営の一端を担う経験をしてもらう。幹部候補としての自覚と事業計画作成スキルを養成する狙いだ。
次世代育成プロジェクトでは、自薦他薦をもとに各部門(5事業部門、3本部)から15人程度の社員を募集し、4〜5人で1チームを作り、新事業のテーマを設定する。プロジェクト参加者は同社の中期経営計画の方向性を踏まえ、テーマとする部門の関係者にヒアリングし、課題などを抽出・分析をした上で、社員の自分たちなりの事業計画を作成する。
プロジェクトは2月に開始し、9月下旬の「最終報告会」に向けて、チーム単位で時間を作りながら事業計画作成に取り組む。期間中、外部の研修会社も呼び、クリティカルシンキングや事業戦略立案などに関する研修も受ける。参加した社員は理論と実践を9カ月間徹底的にたたき込まれることになるわけだ。
参加した社員からは「忙しい」「時間の捻出が大変だった」という本音も上がる一方で、「経営層の考え方を知ることができた」「普段接する機会がない、他事業部との人脈ができた」と手応えを感じる声もあるという。
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