ハイブリッドが当面の“現実解”である理由 勝者はトヨタだけではない:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
EVシフトに急ブレーキがかかっている。CO2排出や電力消費の面で現実が見えてきたからだ。現時点ではハイブリッド車、そのなかでもエンジンで発電してモーター走行するシリーズハイブリッドが最も現実的な方式だ。その理由とは……
日野は大型トラックにパラレルハイブリッド採用
一方、エンジンをモーターがアシストする方式のパラレルハイブリッドでは、メインの駆動力はエンジンとなり、負荷の高い領域をモーターによって軽減する。しかしエンジンも、発進時や加速時には回転数を高め、出力を上げる必要がある。
エンジンは一定回転で、モーターが加速時の負荷を全て受け持つ仕組みも不可能ではないが、それならエンジンは発電に専念して、モーターだけで走行した方が効率は高まる。問題は、これまで車格に応じて利用してきたエンジン資産という縛り、固定概念だろう。
日野自動車は19年に大型トラックの「プロフィア」にハイブリッド車を設定した。これは既存のエンジンにモーターを追加することで、加速時にはモーターの駆動力でアシストし、減速時には回生ブレーキでバッテリーを充電して発進時や加速時に備える、パラレル方式のハイブリッドだ。
高速の平坦路巡行時には効率のいいエンジンで走行するのだが、負荷が大きい時にはモーターを併用することでエンジンの負担を軽減して燃費を向上させる。
しかしこれはトラックの進化においては過渡的な仕様と言える。エンジンは発電に専念すればここまで大きな排気量は必要ない。定速回転で運転、発電してモーターを駆動し、発進時や登坂時、加速時はバッテリーに蓄えた電力も利用してモーターに電力を送ればいいのだ。それなら発電能力は動力性能ほど必要ではないから、発電機もエンジンもずっと小型で済む。
現時点では、プロフィア ハイブリッドは通常のエンジン車と同じエンジンを搭載し、モーターの出力は控えめとなっている。これは車両価格の上昇を抑え、燃費性能の高さで価格差を回収するための措置だろう。実燃費が1割向上すれば、長距離便で使用するなら数年で価格差は回収できる。
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