「シーチキン 虫混入動画」で会社側が訴えても、逆にリスクになってしまう理由:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
シーチキンに虫が購入していたとする動画について、「はごろもフーズ」側が不可解な点があると指摘。SNS上では投稿者へ謝罪を求める声が上がっている。もし虚偽の動画だった場合、メーカー側は信用毀損(きそん)で訴えるべきなのか。
訴えても“解決”にはならない
覚えている方も多いだろうが、回転寿司チェーン「スシロー」の店内で少年がしょうゆ差しをペロペロなめるという不適切動画があった。日本中を大騒ぎにしたあの一件の時も、ネットやSNSでは「訴えろ」の大合唱だった。
スシローのイメージダウンと大損害を招いた少年に、一生賭けても罪を償うべきだという意見や、外食チェーンが同様の被害に遭わないためにも「見せしめ」として巨額の損害賠償金を支払わせるべきだとの意見が世の中の大多数を占めたのである。
そんな中で筆者は、本連載の記事「『外食テロで店がガラガラ』問題 スシローが訴えても“解決”できないワケ」「スシローは『6700万円の損害賠償請求』を止めるべき、3つの理由」の中で繰り返し、少年を訴えても世間の留飲(りゅういん)を下げるだけで、スシロー的にはマイナスのほうが多いので訴訟を止めるべきだと提言させていただいた。
もちろん、ネットやSNSではボロカスに叩かれた。ご立派なジャーナリストやら評論家の方から「こういう頭の悪い大人がいるので、不適切動画を投稿するバカがいるのだ」と厳しいお叱りも散々頂戴した。
しかし、それからほどなくして、スシローは少年への訴えを取り下げた。「和解」をしたのだ。
「おそらく少年の家族が背負う賠償額はこれくらいになるのでは」なんてワイドショーで熱弁を振るっていた「自称・危機管理の専門家」の皆さんは、ムニャムニャと歯切れの悪いことを言っていた。だが、危機管理の現実を知る者からすれば、これは当初から分かりきっていた結末だ。
スシローがペロペロ少年を訴えることには大きなリスクがある。それは、少年側の主張や反論を定期的にメディアに流して、日本全国に広めてしまうということだ。
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