ウエルシア・ツルハが統合しても「業界の覇者」になれない理由 今後のカギを握る2社:小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)
業界トップのウエルシアと2位のツルハの経営統合で、ドラッグストア業界は騒然となった。実現すれば売り上げは2兆円超、次位となるマツキヨココカラをダブルスコアで引き離す圧倒的な規模を誇るグループが誕生することになる。
業界トップのウエルシアと2位のツルハの経営統合で、ドラッグストア業界は騒然となった。実現すれば売り上げは2兆円超、次位となるマツキヨココカラをダブルスコアで引き離す圧倒的な規模を誇るグループが誕生することになる。
「業界の覇権はイオンで確定」とも言えるこの再編は、ドラッグストア大手の時価総額にも影響を及ぼした(図表1)。この業界での時価総額トップは、収益力で他社を圧倒するマツキヨココカラだ。しかし、2月初旬には1.2兆円ほどだった時価総額が、3月下旬には1.1兆円程度と1割ほど下落。時価総額2位はコスモス薬品(売り上げ4位)だが、これも1割ほど下落した。
これに対してウエルシア、ツルハは2%ほど増えており、市場の見方としてはマツキヨココカラ、コスモス薬品の優位性が薄まり、ウエルシア、ツルハの評価が高まったことが分かる。しかし、意外にも時価総額を大きく増やしたのは売り上げ5位のスギHD(+10%)、6位のサンドラッグ(+9%)であり、不思議に思う人もいるだろう。なぜこうしたことになるのだろうか。
ドラッグストア業界の変遷
ドラッグストアは1980年代頃から、まずは大都市部を中心に医薬品+化粧品(薬粧)の店として増え始めた。90年代にマツモトキヨシが首都圏で大きく成長し、広く世に知られる存在となった。
2000年代になると、地方における軽自動車の普及と女性の免許保有率の上昇を背景に、ロードサイドに薬粧+日用雑貨を豊富に品ぞろえした、現在よく見かけるタイプのドラッグストアが広がった。この時、全国各地に地域毎のドラッグストアが成長したのだが、10年代以降は相互の商勢圏がぶつかるようになって競争が激化。ドラッグストアは統合再編の時代に突入していく。
そして、現在のドラッグストア大手のほとんどが「同業他社を統合することで成長する」という経緯を経て今に至っている。中でも、多数の同業を統合して上位企業にのし上がった代表格が、ウエルシアとツルハだった。
関連記事
- 300円ショップ好調の裏で 「100円死守」なセリアが苦しいワケ
物価高を背景に、ディスカウント型のスーパーを利用する消費者が増えている。多くの消費者がより安いものを求める中、100円ショップ業界ではある意外なことが起きている。 - 首都圏で急増中のコスモス薬品 物価高を味方にした戦い方とは?
九州を地盤とする大手ドラッグストア「コスモス薬品」。九州でトップシェアとなった後は、店勢圏を東に向けて拡大し、今まさに関東攻略作戦を進行中だ。コスモスを躍進には、物価高を味方にした戦い方がある。 - 本当の「消費」といえるのか? 大手百貨店の増収増益を手放しで賞賛できないワケ
物価上昇に多くの消費者が苦労している一方、好調を報じられているのが百貨店業界だ。長年、売り上げの右肩下がりが続き、構造不況業種ともいわれていた上に、コロナ禍で甚大なダメージを受けた百貨店業界。本当に回復期を迎えているのか、その現状を見てみよう。 - ディスカウント王者・オーケーの銀座進出が「勝ち確」と言える3つの理由
ディスカウントスーパーとして有名なオーケーが銀座にオープンした。実は、オーケーにとって銀座進出は「勝ち戦」ともいえる。それはなぜなのだろうか。 - そごう・西武は「対岸の火事」ではない 61年ぶりのストライキから学ぶべきこと
8月31日、西武池袋店はストライキにより臨時休業となり、百貨店業界では61年ぶりのスト実行として話題となった。労使協調が一般的となった日本で、なぜ大手百貨店のストライキは行われたのか。そして、このストライキからビジネスパーソンが考えるべきこととは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.