ウエルシア・ツルハが統合しても「業界の覇者」になれない理由 今後のカギを握る2社:小売・流通アナリストの視点(4/4 ページ)
業界トップのウエルシアと2位のツルハの経営統合で、ドラッグストア業界は騒然となった。実現すれば売り上げは2兆円超、次位となるマツキヨココカラをダブルスコアで引き離す圧倒的な規模を誇るグループが誕生することになる。
注目されるサンドラッグ、スギの動向
株価の話に戻れば、サンドラッグ、スギの評価が上昇しているのは、ウエルシアとツルハの経営統合が「これにて完了」と思われていないことの現れだろう。ウエルシア・ツルハ連合、マツキヨココカラ、コスモス薬品が業界の3極となっている中、さらなる仲間を必要としているウエルシア・ツルハ連合の同盟者候補である両社に対して、株価上昇イベントを期待しているということだ。
サンドラッグは首都圏発祥ながら、九州地盤のダイレックスという強力なフード&ドラッグを持ち、スギは3大都市圏中京に強い基盤を持つ。両社の意向はさておき、どちらもウエルシア・ツルハ連合が仲間に迎えたい重要なプレイヤーに違いない。また、サンドラッグとスギが組んだ場合、3極に割って入る可能性もある。
ウエルシア・ツルハ連合が生まれたことで、業界は大手同士の合従連衡による最終決戦の時代に入った。しかし、個人的には、単独路線を貫くコスモス薬品が10年後には1兆円ほど売り上げを拡大していると予想している。地方、郊外の市場縮小、シェア移動を考えると、単なる合従連衡だけでは覇権を確立できないだろう。
例えば、コスモスが優勢を確立しつつある九州、中四国でそのシェアを奪うための画期的な戦略が必要になる。ウエルシアは、イオン九州と組んでイオン型フード&ドラッグ「ウエルシアプラス」を開発。売り上げ2000億円までの拡大を目標にしていると公言しているが、ウエルシア・ツルハ連合が真に覇者となるためには、「コスモス封じ」の作戦が重要になる。その意味でも、サンドラッグのダイレックスは、コスモスと九州・中四国で渡り合える強力な戦力と言える。
イオンが10%弱株式保有しているクスリのアオキの動向は、すでに注目の的だ。今後の各社の打つ手次第で、ドラッグストア業界のパワーバランスは、まだまだ大きく変化していく可能性がある。
著者プロフィール
中井彰人(なかい あきひと)
メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。
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