「事故を起こさせない」保険の正体 事故発生率を18%低減する、あいおいニッセイの試み:後編(2/3 ページ)
保険はもう「事故が起こった後のもの」ではない。事故を未然に防ぐ保険を提供する――という新たな潮流の中、業界をリードするプレイヤーとして注目を集めるのが、あいおいニッセイ同和損保だ。「事故を起こさせない」の正体は?
「CSV×DX」戦略の背景と狙い
そもそも同社はなぜ、長い期間をかけてテレマティクス保険に注力してきたのか。
企業には事業活動を通じて社会課題の解決に取り組むCSV(Creating Shared Value)の実践が求められる一方、デジタル技術を駆使したビジネスモデルの変革、いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せている。同社が「CSV×DX」を経営の軸に据えたのは、時代の変化と顧客ニーズの多様化への対応が大きな理由だ。同社、経営企画部企画グループ光田敬輔担当課長はこう語る。
「かつて保険会社は、顧客との接点が年に1度の更新手続きのみというのが当たり前だった。しかしデジタル技術の急速な進化によって、リアルタイムで客とつながり、事故を未然に防ぐアプローチが可能になった。従来型の"保険金を支払う会社"から"事故を起こさせない会社"へ。私たちはその変革の先頭に立ちたい」
光田氏は、保険サービスのデジタル化を推進することがCSVにつながっていくという戦略の狙いをこう説明する。
「契約いただいた顧客の事故防止に役立つだけでなく、蓄積したデータを分析・活用することで、地域の交通安全にも貢献できる。さらには防災や健康増進など、さまざまな社会課題の解決に資する新たなソリューション創出も可能になる。CSV×DXの先に、"保険を社会インフラに進化させる"。それが私たちの目指す姿だ」
テレマ保険ユーザーは事故発生率が「18%」低い
テレマティクス開発グループの中村氏は「セーフタウンドライブという考え方を広めていきたい」と意気込む。事故が減れば、ドライバーにとっても保険会社にとっても、そして社会全体にとってもメリットがある。そうしたテレマティクス自動車保険の価値を丁寧に訴求していくことで、さらなる拡大を目指す考えだ。
浸透に向けた具体策としては、スマートフォンだけで手軽に始められる新商品「タフ・見守るクルマの保険NexT」に注目する。「すでにテレマティクス自動車保険の提案を受けたものの、車載器の取り付けが面倒で断念したお客さまにも、改めてアプローチしていきたい」(中村氏)
こうした地道な活動と並行して、テレマティクスならではの事故削減効果も着実に示していく構えだ。中村氏は「弊社のテレマティクス自動車保険ユーザーは、それ以外のお客さまに比べて事故発生率が約18%低いことが分かっている」とその成果を強調する。
単に保険料が安くなるだけでなく、安全運転の意識付けにもつながり、実際の事故防止にも一定の効果があることを示すデータだ。「テレマティクスのデータを活用することで、安全運転の習慣付けを効果的に行えることが実証された」と同社は胸を張る。さらに、事故時の緊急通報サービスなど、テレマティクスならではの付加価値についてもアピールを強化していく考えだ。
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