なぜ歯磨き粉はミント味? ヒット商品の誕生には「無駄」が必要なワケ:令和の無駄学(1/2 ページ)
みなさん、最近無駄話をしていますか? 博報堂ヒット習慣メーカーズでは、これらの「無駄」こそ今の社会に必要なものだと考えています。本記事では、無駄こそが真の豊かさを求める上で最強の武器になると思う理由についてお話しします。
連載:令和の無駄学〜僕らにはもっと無駄が必要だ〜
合理的で効率化が求められる社会。どんどん便利になる社会。何不自由なく生きられる社会。しかし、それと逆行するように人々の幸福度は下がっている。
もっと豊かで人間らしい暮らしを得るには、時間的な余白や、一見どうでもいいような機能、生活必需品ではないものの購入など、いうなれば「無駄」が必要なのである。無駄こそ心にゆとりをもたらし、無駄こそ周囲へのやさしさにつながる。真の豊かさを求める上での最強の武器である「無駄」について、社会を解剖していく。
みなさん、最近無駄話をしていますか?
会社の行き帰り、目的もなくふらりと寄り道していますか? スケジュール表で、何もしない時間をブロックしていますか? うまくいくか分からないけれど、面白そうだから、楽しそうだからという内的動機に振り切った企画を実現する機会はありますか?
いつからでしょうか? そういう無駄なことをするのが悪者になってしまったのは。
筆者が所属する博報堂ヒット習慣メーカーズでは、これらの「無駄」こそ今の社会に必要なものだと考えています。無駄こそが真の豊かさを求める上で最強の武器になると思うのです。
今回は、私たちがなぜ今「無駄」が必要だと思うのかをお話ししていきます。
最近、おもろい人が減った気がする
以前はもっと、いい意味でキャラ立ちした人が会社に多かった気がします。2000年にとあるメーカーに就職した私は、エンジニアとして携帯電話の設計をしていました。(その頃の自分はやがて広告会社で働くなど思いもしませんでした!)
当時の上司と、会社にいる面白い、空気を読まないユニークな人たちを「オモキャラ番付」として、横綱から順に並べてみていました。(今の時代だと不適切と言われるかもしれませんが……)そういう人が新たなイノベーションを生み出すと考えていたからです。
毎年番付をつくっていましたが、だんだんと「オモキャラ番付」が埋まらなくなってきました。上司も「最近、オモキャラ減ってきたなー」と嘆いていました。05年くらいでしょうか。インターネットが普及し、合理化がうたわれるようになった頃のことです。
それから早いもので20年近くがたちました。インターネットばかりではなく、スマホも普及し、さらにはAIまで。便利さの極みです。その結果、ビジネスでは合理化がどんどん進み、変わったことを言っていると本当に“変わったやつ”としてのレッテルを張られるリスクも高まりました。もともと同調圧力の強い国民性というのも相まって、スマートな振る舞いや発言が称賛される社会が完成したわけです。
さらに、コロナ禍の襲来によりリモートワークという選択肢も増え、気付けば1分の隙間もなく、ぎっしり会議ばかりが埋まっていく。コロナの前は、会議前後の移動時間がわずかな切り替えタイムになっていた気もしますが、それもなくなり、トイレに行く時間もなく、画面オフにしてコッソリごはんを食べる。こんな日常が当たり前になってきました。
コンテンツも多すぎて、SNSも見ちゃうし、とにかく情報が多い。あー忙しい。隙間がない。息苦しい。そう感じている人も多いのではないでしょうか。
だから「俺たちの自由を返せ! それには、無駄が必要だ!」と、アンチテーゼを唱えたいわけではありません。私たちが、無駄が必要だと考える理由は、大きく2つあります。
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