AIを車載「DSオートモビルがChatGPTを全モデルに搭載」って一体どういうこと?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)
タイトルだけみてもさっぱりわからないであろう記事になる。まずDSオートモビルというブランド自体に知名度がない。そこへ持ってきてChatGPTという、極めてふわっとした先端テクノロジーが結びつくのだから、何がしたいのかがなかなかピンとこない。これはどういうことか?
タイトルだけみてもさっぱり分からないであろう記事になる。まずDSオートモビルというブランド自体に知名度がない。そこへ持ってきてChatGPTという、極めてふわっとした先端テクノロジーが結びつくのだから、何がしたいのかがなかなかピンとこない。
ステランティスのDSオートモービル
DSオートモビルはステランティスグループのプレミアムブランドの一つだ。ステランティスは、そもそもプジョーとシトロエンを軸とするフランス系の自動車メーカーグループであるグループPSA(Peugeot Societe Anonyme)と、フィアットとクライスラーを軸とするFCAオートモビルズ(Fiat Chrysler Automobiles NV)による合弁会社であり、トヨタ、フォルクスワーゲン、ヒョンデに次ぐ世界第4位の自動車メーカーグループである。
グループ内には14ブランドが存在し、アルファベット順に、アバルト、アルファロメオ、クライスラー、シトロエン、ダッジ、DS、フィアット、ジープ、ランチア、マセラティ、オペル、プジョー、ラム・トラックス、ボクスホールという大所帯である。
グループ内におけるフラッグシップブランドはマセラティ。その下に、ドイツ御三家をライバルとするプレミアムブランドとして、DS、ランチア、アルファロメオがそれぞれ個性の異なるブランドとして存在している。DSは、このうち、フランス系ブランドのトップエンドを担うものだが、ここの話は少々ややこしい。詳細は過去の記事『フランスの高級車復活に挑むDS7クロスバック』に譲るが、ポイントだけ要約しておこう。
フランスの自動車業界ではかなり早期に高級車が途絶してしまった。戦前に遡(さかのぼ)れば、他国同様ちゃんと高級車もあった。パナール、ブガッティ、ドライエ、ドラージュ。あるいはちょっと微妙なところでイスパノ・スイザやファセルといったクルマたちだ。
しかし第二次大戦で戦場となり疲弊しすぎたフランスでは、戦後高級車のマーケットが激減し、これらのメーカーは高級車マーケットから撤退せざるを得なくなった。その結果、大衆車をメインとするメーカーだけが残った。そうなると端的にフランス大統領や国賓が乗るクルマに困る。結局は大衆車メーカーであるシトロエンの大きなクルマでしのいでいた。
この100年というもの、先進各国にとって自動車は国策であり、基幹産業であり、国の威信を背負う存在だった。本来なら戦前に名を轟(とどろ)かせた赫々(かっかく)たる高級ブランドのクルマが良いに決まっているが、死んだ子の齢を数えても仕方ない。シトロエンブランドに不足を言えば、自動車生産国であるフランスの大統領がロールス・ロイスかメルセデスなど他国のクルマに乗るという、より屈辱的絵柄になる。
国を代表する高級車ブランドが欠落していることは長らくフランス人のコンプレックスであったように思う。だから2009年にDSというブランドが発足した時、筆者はその向こう側にフランス人の長年の鬱屈(うっくつ)を見た気がした。
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