「東京湾アクアライン」6車線にすれば“渋滞”は解消するのか 課題は他にある:高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)
東京湾アクアラインは、海上の海ほたるPAの人気や千葉県側の観光スポットの充実もあり、週末は深刻な渋滞が発生している。6車線化などの設備改良に加え、ドライバーへの渋滞対策の周知など、多角的な対策が必要だ。
6車線化だけでは渋滞は解消しない?
23年6月、千葉県はアクアライン6車線化へ向けて国への要望書をまとめた。これは、車線を増やすことで渋滞解消を狙ったものだ。
アクアラインはそもそも片側3車線の6車線化を見据えて設計されたとも言われている。実際に走ってみると1車線の道路幅がゆったりしていて路肩を広くとっているから、そのまま3車線化できそうに思えるが、これは緊急時に消防車や救急車が通ることを考えたものだ。
つまり既存のトンネルでは6車線化は難しい。しかし既存の2本のトンネルだけでなく、海ほたるにはもう1本トンネルが通せるよう余裕がもたされており、海ほたるから川崎側へ300メートルほど掘り進められているらしい。
千葉県が国に提出した要望書には6車線化の検討を進めるよう書かれており、これから計画したとしても実現は10年先のことになる。
ただし6車線化しても、海ほたるへの出入り口が増やせないなら、渋滞の解消にはならない。そういう意味では前述の海ほたるPA充実案には、PAへのアプローチの2車線化など、PAとしての容量拡大も併せて考える必要があるだろう。筆者はむしろこちらの方が重要だと思う。
現在の海ほたるPAを俯瞰(ふかん)すると、トンネルの入り口側である千葉側に道路や施設があり、人工島の川崎側スペースには若干の余裕が見える。この部分を活用し、さらには必要であれば追加の埋め立てをして人工島を拡大し、現在の施設を囲むように立体駐車場と店舗スペースを拡大できないだろうか。
個人的にはモノレールも橋梁部分にオーバーハングさせて吊(つ)り下げたら、眺めは壮観であろうと思う。海底トンネルをさらに1本増やすことになるのだろうが、海ほたるPAでジャンクションのスロープを縫うようにモノレールが走れば、それは何とも複雑で、日本の高度技術をアピールする絶好の建築物になると思う。これからますます人口減少へ向かうことを考えたら、鉄道・モノレール導入は非現実的だろう。だが、夢見る層は一定数存在するであろう。
さらにアクアラインより南、三浦半島と富津岬付近を結ぶ東京湾口道路も建設が検討されている。こちらはまだ具体的な建設計画はないものの、千葉県の各市長と県知事が国に早期実現への要望を提出している。
関連記事
- 高速道路SAPAの「有料化」案 しわ寄せで何が起こるのか
高速道路のサービスエリアとパーキングエリアについて、混雑緩和を目的とした有料化の検討について報じられた。しかし、有料化にはデメリットも多い。駐車スペース拡充や通行料金の見直し、トラックドライバーの地位向上などについても考える必要があるだろう。 - キャンピングカー人気は続くのか 需要維持に必要な要素とは?
日本のアウトドアブームが落ち着いてきた一方、キャンピングカーの人気は衰えていない。展示会では大型車両をベースにした展示車が増え、熟年オートキャンパーの心をつかんでいる。しかし、ブームによるマナー低下に歯止めをかけないと、衰退につながりかねない。 - 教習所のクルマが旧態依然としているワケ 教習車ならではの事情
運転免許取得のために通う自動車教習所で使われるクルマには、EPB(電動パーキングブレーキ)などの先端装備は搭載されていない。教習内容を厳格に定められている教習所ならではの事情があるからだ。教習車に求められている要素とは? - ハイブリッドが当面の“現実解”である理由 勝者はトヨタだけではない
EVシフトに急ブレーキがかかっている。CO2排出や電力消費の面で現実が見えてきたからだ。現時点ではハイブリッド車、そのなかでもエンジンで発電してモーター走行するシリーズハイブリッドが最も現実的な方式だ。その理由とは…… - スポーツカーはいつまで作り続けられるのか マツダ・ロードスターに見る作り手の矜持
スポーツカーが生き残るのが難しい時代になった。クルマの楽しみ方の多様化や、規制の厳格化が背景にある。一方、マツダ・ロードスターの大幅改良では、規制対応だけでなく、ファンを納得させる改善を実施。多様化が進む中でビジネスもますます複雑になるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.